ガイド日誌

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2009年3月18日(水)

誘惑危険!! アウトドアと麻薬

冬がおわった。春になった。

山はまだ冬山だけど、たぶんもう「膝ラッセル」とか「腰ラッセル」はないだろう。

終わってみれば、冬はあっという間だった。ラッセルだって思い出になると愛おしい。

ガイドをやっていると大抵は先頭を歩くから、いつもラッセルだ。ボクはあまのじゃくで他人とは違うところに行きたがるから、大抵はひとりで黙々とラッセルをすることになる。

ラッセルが仕事だ。

苦しいと思うかもしれないけれど、案外と、ある域を超えれば平気になる。

ランナーズハイとかいう、あの状況になる。

エンドルフィンとか脳内麻薬とかいわれるアイツだ。脳内モルヒネともいう。インターネットのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』なんかで調べたら詳しいことが載っている。

脳内がイッてしまうのだ。体がサクサクと機械的に動くようになり、苦しさを忘れる。ヘラヘラしてくる。

いかにも変態っぽい。

僕は趣味で自転車で旅をする。そういう旅の日々によく脳内イッてしまう状態になることがある。チャリダーだから、これはチャリダーズハイだろう。

1日中走り続けても平気だったりするのだ。

ラッセルでも同じようになる。

最初のほうは苦しいんだけど、だんだん調子があがってきて、なんだかヘラヘラしてくるのだ。そういうときボクは「うお〜〜」とか吠えたりする。

ボクが吠えているのを聞いたことがあるお客さんは結構多い。

キモっ!とか思うかもしれないな。

やばいね。

僕はたぶん、エンドルフィンが分泌されやすい体質なんだと思う。昔から短距離よりも長距離走が好きだったし、いまじゃ趣味でも仕事でもしょっちゅうイッている。

参ったな。変態なのかな。

登りでもそうなることがある。たまに「登りスイッチ」が入る。「ピタゴラスイッチ」じゃないぞ。

スイッチが入ると麻薬が浸透してくるから、自分がガイドであることすら怪しくなって、火がついたように登り始めることになる。ボクはスピードが早いわけじゃないけど、いつまでも止まらない。

誰か止めてくれ!

気がつけばお客さんがみんな、はるか下にいたなんてことも、しばしばだ。

そのたびに反省しているけど、麻薬なんだから仕方ないよね。(苦)


2009年3月17日(火)

MTBダウンヒル

そろそろ夏のプランニングの季節だ。

いつまでも「パウダーだ〜ヤッホー!」と叫んでばかりいられない。

悩みがある。それは「MTBダウンヒル」。

このツアーは開業当初からある。最も古いツアープログラムのひとつだけど、もう、この手のプログラムが支持される時代は終わったとも感じている。

もし継続するのならば、サポートカー並走のガイド同行で、当然ヘルメットと手袋、蛍光色のジャケット着用が義務になる。ランチもつく。欧米によくあるスタイルだ。 当然費用も1万5千円から2万円程度と欧米並みになるだろう。

これならばリスクコントロールもツアー満足度も最高のパフォーマンスを提供できるだろう。アウトドアツアーとしての完成度も高い。

しかしこのやり方は、まだまだ日本では受け入れられない。日本人は決して欧米人と同じではないし、付加価値の受け取られ方も違う。

いまの「MTBダウンヒル」はガイドが同行しない。実態は「トランスポートつきMTBレンタルサービス」だ。自転車と参加者をスタート地点(十勝岳など)まで運んで、地図を渡してガイド解説をおこない、あとは自由行動というシンプルなスタイルだ。

ゆえに格安で催行できる。

ところが、今のスタイルは非常に危ういという。もし怪我人が出たら、昔ならばナァナァで済まされただろうが今は違う。アウトドアのツアーなのにガイド同行がなくサポートがなかったということで100%アウト、主催者は損害補償を免れない。 そもそもサポートがないわけだから参加者の「自己責任」とはならず、まして責任を放棄しているとみなされてアウトだ。

安いツアーなんだから我慢してよねと裁判所が言うはずもない。

ツアーじゃありません、自転車と人を有償で車で運んだだけですといえば、今度は道路運送法違反に問われるから始末が悪い。実際ニセコで逮捕者が出ている。

あ〜、昔は良かったよね、ということだろうか。

昔は、ユースホステルや民宿がお客さんを連れて野山に遊びに行くという格安のアクティビティが多くみられた。しかし、案の定さまざまな事故が散発的に発生したため激減していった。そういうツアーは格安ゆえにリスクに備えられないし、おまけに宿の主人やアルバイトは多くの場合アウトドアガイドに関する資格を取得するスキルもなく、取得には経済的負担も大きいため、宿のアクティビティは姿を消しつつある。今残っているところも、何かをきっかけにやめていくだろうと考えられる。怪我をしましたからお金をくださいと誰かが言えば。その日は必ずやってくるので、あとは時間の問題だ。残念だけど、 今はそういう時代なのだ。

時代は変化して、日本のアウトドアもまた、ゆっくだけど欧米並みに成熟しようとしている。日本の訴訟社会化もまたそれを強力に後押しする形になっている。

そのうち近いうちに無資格のアウトドアガイドは営業できなくなるかもしれない。

少し残念だけど、誰かが死んだり怪我をしたりするよりはいいと考えるしかない。

おっときょうは、ちょっとシビアな話になってしまった。

MTBダウンヒルは、今のままでは続けられない。残念ながら、時代が変わったことを認めざるを得ないのだ。

※MTBダウンヒルは2009年度から休止します。いつか生まれ変わったツアーとして再開したいと思っています。


2009年3月16日(月)

黄砂迷惑

黄砂が来るかもしれないとパウダーな友人が嘆いている。

え!マジっすか?

そこで気象庁の情報コンテンツを閲覧した。

ヤバっ!

いっそ雨が降って、沿岸で撃退してほしい。

黄砂がやってくると、野にも山にも見境なく黄砂が降りそそぐ。どこもかしこも黄色く汚れてしまう。家も車も黄砂を被れば汚らしい。迷惑このうえない存在なのだ。

7月上旬まで純白の雪に覆われる大雪山系や十勝連峰の、残雪期の姿はこのうえなく美しい。新緑の季節の美瑛の丘の背景に広がる残雪の山々の裾野は、山に縁のない人ですら心奪われる素晴らしい光景になる。

しかし、ここにもまた黄砂が降る。黄色のような灰色のような下品な色に薄汚れて、しかも全山に融雪剤を散布したようになり雪解けが急ピッチで進む。雪のうえは砂を撒かれたようになって春スキーが憂鬱なものになるだけではない。雪どけが進めばGWの焼肉スキーツアーまでもが危ういではないか。

それは困る。焼肉は、おれたちのライフワークなんだ。

おれたちパウダー教徒にとって焼肉は忘年会のようなもので、これがなければ心に区切りができずに夏を迎えるから気持ちが収まらないのだ。困る。

ところが、救いが現れた。

いま、いい具合に道南では雨が降っているという。

祈願、黄砂上陸阻止!

こういうとき、雨は大歓迎だ。

 気象庁「黄砂情報」


2009年3月15日(日)

クロカンでバックカントリー?マジっすか!三段山編

細板・革靴テレマークが注目されて久しい。

でも、オレたちは思う。

これからはクロカンだ!

来るでしょう!クロカンの時代っ!

ということで、時代を先取りして、クロカンで三段山に行ってきました。

 

 カルフガイド(テレマーク)組には余裕でも、

↑カッコイイよ!サイモンさん!

 クロカン組には悪夢が待っていた(涙)

↑目の前で先攻が次々と撃沈するのを見て後続はビビリまくり

 この差が、たまらん(悦)

↑標準的なテレマークスキー(右の2本)と、巷で話題?のクロスカントリースキー(左)

 わけわからんけど、楽しいっ!

なんだか大騒ぎ(笑)

まもなく来るでしょう!クロカン・ブーム!


2009年3月14日(土)

ツアー中止ですけど?

悪天候で、きょうのツアーは中止になった。土砂降りの雨になってしまったのだ。やはり土曜日は呪われている。

しかし中止連絡が遅かったので、参加者のうち4名のお客さんは来店してしまった。

う〜む・・・。

すでにホテルをチェックアウトしていて、どこにも行くところがなかったり、道内の人は超早起きして美瑛までの長距離ドライブの末にやっと辿り着いたのだ。

まさか帰れとはいえない。(たまに言うけど)

でも、きょうの十勝連峰はワヤだ。行くだけ無駄というものだろう。

悩んだ末に、下見に連れていくことにした。

行ったことのない山だけど、元ネタがあるので心配ないだろう。

しかし、遠い。片道100kのドライブだ。

 雨のなか国道40号を北へ北へと車を走らせる。

 正午ごろ、道路脇に車をとめて、小雨のなかを歩きだす。

 2時間で山頂。全員雨でびしょ濡れ、容赦ない暴風。

 ほう・・・ 、おいしそうな斜面がいっぱい。

 帰りが遅くなったので、夕食を。

東旭川 スリランカCurry「スサンタ キッチン」

シェフはスリランカ人のスサンタさん。日本人向けにアレンジしていない、本物の味だ。特に豆のカレーは絶品。本当に「あっちの国」の味だった。


2009年3月13日(金)

週末を襲う○○

 2月14日(土曜日) 中止

 2月21日(土曜日) 中止

 3月7日(土曜日) 中止

 明日3月14日(土曜日)の予報・・・

 

これは、もしや呪いか?


2009年3月12日(木)

感動の涙

ああ、なんということでしょう・・・。

北海道にも美瑛にも十勝連峰にも、ぜ〜んぜん関係ないけど、お許しを。

(涙)

探偵!ナイトスクープ

首都圏の電車の中吊り広告(下写真)


2009年3月11日(水)

春と冬のはざまで

3月10日、旭川郊外を車で走っていたら、畑に融雪剤を撒いていた。石炭や木炭を細かく砕いた粉に鶏糞などを混ぜたものだと聞いている。スノーモービルの後ろに大きな釜のようなものをのせて、その釜の内部が回転して散布されていくのだ。

雪どけを大幅に促進させる働きがあるが、その後はそのまま肥料になるのだ。

畑をスノーモービルが走り回っているけれど、遊んでいるんじゃないぞ。

農作業はもう始まっている。

そんな季節なのだ。

日中から夕方にかけて気温がぐんぐん上がった。昼間はプラス6度くらいになり、雪が一気に5センチくらいとけた。

3月11日、きょうは朝から吹雪模様。おとなしく家のなかでデスクワークをした。外はまだ深い雪だけど、仕事の準備は確実に春夏モードだ。

農家と同じで、気持ちをそろそろ春夏モードに切り替えつつある。

仕事をしながらも外を眺めるのが好きだ。昼ごろには雪が猛烈に降ってきた。風景が真っ白けっけになり、近くの林が霞んで見えづらくなった。たちまち雪が積もり、駐車場の車のうえには10センチくらい新雪の層ができた。

3月になって積雪が増える傾向にある。平野の雪は一進一退を続けているけれど、山の雪が増え続けている。

3月だというのにこの週末はパウダーかもしれない。いやいや、またまた猛吹雪で中止になる可能性がある。

それはそれで困ったものだな。


2009年3月9日(月)

「地球の歩き方」に載る!

どうもマスコミ取材が苦手なのだ。特にテレビ取材からは逃げ回っている。

大学を出て最初に就職したのが広告代理店だった。かつて制作側にいたせいか、「テレビに映る側」になることへの抵抗がある。業界を去ってずいぶんになるのに、今でも苦手なままだ。 それでも取材を受けることがあるけど、オンエアが過ぎ去るまで息をひそめている。テレビに出るので見てください!って宣伝する気になれない。

何だかかわいくないな。けどご勘弁を。苦手なんだよ。

漁師さんが魚を買いに行くような?大工さんが分譲マンションを買っちゃうような?

変な気分になる。

でも、ガイドブックは別だ。

「うれしー!!!」

海外向けのメディア最大手の「ロンリープラネット」に載ったことを知ったのは、まさに海外旅行先だった。暇つぶしに町を歩いていてぶらりと入った本屋さんで、日本を紹介するガイドブック「JAPAN」を手に取った。北海道の欄をみたとき、ボクの店が紹介されているのを見つけた。しかも太字で強調されていて、エクセレントと書かれていた。

なんだか胸が震えた。

「おおお〜ニッポンだ!」

これをみて手に取るなというほうが無理なのだ

異国の町でたまたま入った本屋さんで自分の店の紹介を見たという、思いがけないシチュエーションだったから、ということもあるけれど、なんというか、不意打ち電気ショックを受けたようなカンジだった。不覚にも涙が出た。

本当にうれしかった。

でも実は、いつ取材がやってきたのかも知らない。

毎年たくさんやってくる外国人のお客さんのなかにロンリープラネットの取材スタッフが紛れていたんだと思う。まるで「ミシュランガイド」みたいじゃないか。

気が抜けない。

きょう、「地球の歩き方」の取材申し込みがあった。ご存知、あの分厚い旅行ガイドブックだ。国内旅行版もある。

うれしー!

なんだかうれしいじゃないか。

「るるぶ北海道」に続いて「地球の歩き方」にも載る!

ボクは現役の旅人だから、特に光栄だと感じる。

なんだかマニアックだけど、こういうのはうれしい。

おなじみ「地球の歩き方」

誰もがこれを小脇にかかえて旅にでる


2009年3月8日(日)

三段山 ナマコ尾根

春なんだし、たまには気分をかえよう、ということでナマコ尾根に行くことにした。

ここはまわりの1500m級の尾根が壁となり、強い西風や嫌らしい南風を阻んでくれるから、嵐のあとに来ても穏やかだ。特に春先がいい。

週末の喧噪も ここまでは及ばない。たまに山岳会系のパーティが来るくらいだ。

ここの沢には、いかにも掘りたくなるような雪溜まりが至る所に見られる。先週の雪洞訓練で掘った立派な雪洞が残っているはずだったけど、先日の嵐に跡方もなく痕跡を消されて見つからなかった。

沢の底部では積雪が一気に増えて先週よりも1m以上も底上げされた。週末のたびに積雪がどんどん増えているような気がする。

新しい雪洞を掘ることにした。きょうは三段山クラブのHiroさんという頼もしい雪洞マニア?が助っ人にきている。Hiroさんが率先して穴に潜り込んで、すごい勢いで掘り進んでいく。

そのうち、ナマコ尾根を滑り終えたテレマーク中級チームも合流して大工事が始まった。guroガイドが他所を掘り始めた途端に先週の雪洞が遺跡発見のごとく現れて、そのうち新旧の雪洞が内部で貫通連結されて内部が整えられて12人が楽々入ること ができて足を伸ばせる巨大な雪洞ができた。まるで要塞の内部みたいだ。(写真)

みんなで力を合わせたら、こんなに大きな雪洞ができてしまう。

いや〜、雪洞掘りって楽しい♪

ここで暮らしたい。みんな、そう思わないか?

さて、風変りなランチタイムを存分に楽しんで穴から出てきたら、外はすっかり晴れていた。

僕たちはナマコ尾根に立ち、景色を眺め、思い思いに滑りを楽しんだ。

真っ青な空中庭園を滑るみたいで、楽しい。

野生の雪ウサギが雪原を走っていった。みんな、こんな近くで見るのは初めてだと興奮する。

さいきんの連続来襲低気圧のおかげで沢や谷がすっかり埋め立てられて、なだらかなスロープになっている。いまはどんな谷底だってツルリと整った1枚バーンになっている。

それにしても、フリコ沢の両岸が完全に繋がってしまったのは驚きだ。

ここで12年バックカントリーガイドをしているけれど、こんなことははじめてだ。沢の積雪はいったい何メートルあるんだろう?少なく見積もっても10mはあるだろうか。

このぶんだと春スキーはきっと快適だろう。


2009年3月7日(土)

週末といえば、低気圧

いい天気といえば平日。そして週末といえば低気圧。ここんとこの定番か?

きょうも天気予報どおりの低気圧デーになった。参ったぜ!

午前5時には中止を決めたが、徐々に明るくなるにしたがって外が案外落ち着いていることに苛立ちをおぼえた。こういう場合、お客さんが不満を持つことは必至なのだ。参ったな〜2。しかし、周辺の主な国道の峠は通行止めで、僕らのフィールドへと続く吹上温泉への道路もまた麓で閉鎖されていた。万事休す。

案の定、一部のお客さんからは不満も聞かれた。僕も出来ることならば実施したかった。中止=収入ゼロなんだから、いちばん催行したいのはボクなのだ。しかし、どうにもならないじゃないか。無理に実施して何度か冷っとした経験もある。プロガイドなら誰もが経験することだし、その結果の不幸としか言いようのない事故も多い。天気には誰もかなわない。無理をすればいつかきっとしっぺ返しがある。3回無事だったからといって4回目が無事とは限らない。そういうものだ。その日は必ず来る。プロガイドは目先の金のために仕事をしてはいけないぞ。そうは思わないか?

「楽しー!」のためにオレたちプロガイドがいる。だから未来の楽しーのために新しいフィールドの開拓もするぞ!

ひっそり静まったオフィスで地図など広げて先週の2度の「開拓」を振り返った。水・木の2日間で行った開拓はなかなかいい結果を残した。滑れる斜面は少なく見積もっても5本以上ある。ダケカンバの疎林で、北斜面。もちろんパウダーだ。

しかも、山行も楽々ときている。

これから何度かの下見を繰り返して完成させたいと思っている。

さて、明日は一転して、いい天気になりそうだ。間違いなくパウダーだろう。今シーズンのラストパウダーになるかもしれない。

ウヒョ〜な北斜面のオンパレードだった夕留尾根

ここを滑りたいと思わないか?(木曜日の開拓にて)


2009年3月6日(金)

きょうの開拓 修験道の道へ

きょうは旭川周辺の山に行ってみた。

地形図をたよりに東斜面、北斜面を探す。頂上へのアクセスが3km以内で眺望が良さそうな山をピックアップする。

ここで重要なのは、麓に車を止められる場所があるかどうかということだ。これが案外、ハードルが高い。

見通しの良い道路脇に車をおいてスキーを装着して出発するが、どう見てもテレマークスキー向きの山ではない。さっそくカラマツの人工植林の森で始まった。

人工の森は無機質だ。原生林のような朗らかを感じない。

1時間もしないうちに今度はトドマツの植林になった。隙間なくビッシリと木が植えられている。見上げても空が見えない。斜面に貼りつくように九十九折れの造林用の作業道がある。そこしか登るルートがない。

昼なのに薄暗い。まるで修験道の道だ。

甲州街道とか三国街道とか、熊野古道というカンジもしないでもない。

標高600mで方向を見失う。コンパス測定を行いたいが視界が効かずどうにもならない。GPSを使うが、樹林帯が過密すぎて時々エラーがおこる。

とりあえず、方角だけを確かめて尾根を進む。そのうち多少の視界が開けていくつかの小ピークが見えた。現在地の測定を行う。磁北9度で方角は260度。45度の方角にも小ピーク。2点が確認できればだいたいの現在地がわかる。

それにしても風がひどい。

発達中の低気圧が接近していた。午後になって南風が猛烈になり、ボクのいる斜面に体当たりしてきた。

こりゃかなわん。

さっさと退散を決めた。

ところで作業道をテレマークで滑っても全然楽しくない。苦痛なだけだ。

帰り道は地吹雪になった。

修験道には向かないオレであった。


2009年3月5日(木)

きょうの開拓 「夕留山」

きょうは夕留山に行ってきた。広くて穏やかで明るい、いいカンジの癒し系フィールドだ。

標高はあまり高くない。伐採が入らない広葉樹の自然林に包まれた朗らかな尾根がどこまでも続いている。

尾根からは四方に向けていいかんじの斜面が伸びている。腕に覚えのあるひとならば泣いて喜ぶオープンバーンだろう。転げまわるのにピッタリだ。 (本気系には不向き)

また尾根の上は広くて、数十人規模の焼肉パーティが何組でも開けるほどだ。(どういう例えやねん?)

特に北面の斜面は広くておまけに雪質がいい。疎林のオープンバーンで、しかもけっこうロング。(左下写真)

こういうオープンバーンが何本もある。

ここならば初級と中級が同時にツアーを楽しむことができるだろう。焼肉ツアーにもいいかもしれないけど、こんな豊かな広葉樹の森だから、熊はいないはずがない。

焼き肉はやめたほうがいいね。

「でもさ、向こうの山も、良くね?」

おおお、なんということだ。

向こうの山は、なんだかオープンバーンのデパートってかんじじゃないか。規模も大きくて、そこらへんじゅうが、富良野岳のベベルイ沢ってカンジだ。

ご近所の山に目が釘付け。隣の芝生はなんとやら。

「やばいよ、絶対!」興奮するオレ。

見たところ7合目以上が開けた笹原で、地形図と見た目が合致している。ここにたっぷりの雪が積もっているし、斜度もちょうどいいカンジだ。

「う〜ん・・・やばい、やばい山だ。」

こうして耶馬居山と命名する。(名前がないのだ)

そそくさと下山してロードマップをたよりにアクセスしてみるが、大きな河川が横たわっていてうまくいかない。そして、見上げれば見上げるほどにカッコイイ・・・。惚れてしまったぜ。

おれの開拓はいつになっても終わることはないのであった。


2009年3月4日(水)

開拓精神?

う〜む。

新コース開拓というのはなかなかうまくいかないことが多いけれど、今回はバタバタといくつかのコースができるかもしれない。

でかした!オレ!手(チョキ)

ひとつは「芦別」、ひとつは「上川」、ひとつは「そば地帯」(江丹別・幌加内)だ。

塩狩峠の旧国設スキー場跡地も面白そうだ。なんたってJRのホームから出発するというあたりが変でいい。

でも、やっぱり思うのは、どこも十勝連峰には及ばないということ。残念ながらそれは間違いない。

でもまあ、それを再確認できるのもいいし、それはそれで面白いものだ。

もうひとつ。開拓したい場所があるけれど、そこはちょっと遠い。

トムラウシ温泉の一帯はなんだか面白そう。地形図を見るだけでワクワクする。

でもね〜、遠いっしょ!

すぐ山の裏なんだけど、実際に行くとなれば、いったん南に下り狩勝峠を越えなければならない。帯広の手前の「新得」まで行って再び北上する。トムラウシ温泉に向かって伸びる、十勝川に沿った険しい道だ。

こちらから見たら、ちょうど十勝岳の裏になるあたりだ。

半正二等辺三角形の長いほうの二辺を通ることになる。参ったな。

開拓も楽じゃないなー。


2009年3月3日(火)

フィールドの開拓

スノーシューならいざ知らず、テレマークスキーの新フィールドというのはなかなか見つからないものだ。周辺にはこんなにも山がたくさんあるのに。

それでもあきらめたわけではない。 3月に入って平日の仕事には空きが出ることもあるので、こういうときが偵察のチャンスだ。おまけに3月は比較的お天気にも恵まれることも多いから。

きょうは地形図でいくつかのアタリをつけた。いずれも旭川の北、車で40分以内の場所。江丹別、幌加内といった、気温の低いことで知られる一帯だ。このへんは山容が比較的穏やかで、頂上付近がこんもりしたポコ山であることが多い。

明日とあさっては休みなので、とりあえず行ってみよう。除雪終点なども確認しなければ。

そうそう。きょうホームページを春バージョンにした。表紙は福寿草だ。昨年?ガイドの山小屋の裏に咲いていたものだ。雪がとけて最初に咲く花。

もうそんな季節なんだなーと、自分でレイアウトしておいて感慨深い。そういえば早くも夏の予約や問い合わせがある。

確かに春が近づいていると感じる。

地形図をみながらおいしそうな斜面を探すのは楽しい。


2009年3月2日(月)

旭川にネパールのカレー

ネパールレストラン ビスターレビスターレ旭川店 というのが旭川市末広にあると知ったのは、つい最近のことだ。頻繁に中東ヨルダンやアフリカのモロッコなどに通うアラブ通の友人から、なかなかいいナン(中央アジアのパン)を出す店があると聞いたのだ。すぐ近くには、旭川ラーメン界でもっともうまい!と噂される、「梅光軒末広店」がある。人はこの界隈を、うまいもの激戦区と呼ぶ。(たぶん)

すばらしい週末パウダーDaysを過ごしたオレだが、 頭のなかではもうひとつの煩悩が渦巻いていた。

ネパールカレー食いたい。

厳冬の十勝連峰がヒマラヤに見えてしまうオレなのだ。(行ったことないのに)

そうなのだ。人は高所で過ごすと、ネパールカレーを食べたくなる。あるいは、チベット料理を食べたくなる。(たぶん)

煩悩がうずまくのだ。神々の煩悩といっていい(謎)

現実の世界と妄想の境界があやふやになってくる。パウダー中毒のせいだ。

仕事のない今日、おれたちは麓の村(ビバウーシ)を降りて、アサヒッカワの町へ行くことにした。アサヒッカワには魅力的なバザールもあるし、うまいものを食わせる店がいくつもある。

アサヒッカワにむかって車をゴトゴト走らせる。郊外の農村では、早くも農作業の準備が始まっているようだった。春が近い。

アサヒッカワは大きな町で周囲を中央山岳地帯に囲まれた、ミルクロードの要衝にある。各地から集まった人々や外国からの観光客、荷物を積んだトラックがひっきりなしに行き交い、巨大な建物が通行人を圧迫する。都会なのだ。ダイセーツの山々や、トカプッチー峰が遠くに見える。サンダー峰(聖なる山の意味)も見える。その山麓には俺たちの村がある。

村を出て1時間10分ほどでネパール料理店に着いた。俺たちは野菜のカレーと豆のカレーを注文した。店の奥にある釜でナンが焼かれて、ケバブの串が外されて肉が切り分けられているのが見える。ネパール人のシェフが黙々と腕をふるう姿が見える。厨房からは香辛料の香りが。

あああ〜。たまらん。

運ばれてきた料理を夢中で食った。ナンをちぎり、右手でカレーをすくい、口に運ぶ。ただただ必死でこの作業を繰り返す。おいしいものに言葉はいらないのだ。

パウダーにまみれた俺たちの胃袋を香辛料の優しい香りが癒していく。まるで漢方薬のようだ。

滲みていく感じというのだろうか。(本当に)

ナンをもう1枚おかわりして、皿に残ったカレーをすっかりぬぐって食べきった。

あああ、真に幸せな瞬間。峰々の神に感謝。

ネパールの香辛料は、高所でパウダー三昧に疲れた人々の体を、ビスターレ、ビスターレ(ネパール語でゆっくりゆっくり)、やさしく癒してくれる。


2009年3月1日(日)

穴掘りツアー?

きょうのツアーは、ビバーク訓練のつもりだったのに。

白銀荘に来てみたら、天気はいいし、雪がありえないくらい軽い。

昨日よりもさらにいい雪に変化しているではないか。

ボクの気持ちは激しく揺れた。

そして誘惑に負けてしまった。

せっせと登り、三段山の西尾根へ。残念ながら西尾根正面は滑られた後だったけれど、なあに、コチラから攻めればいい。ほら、案の定、ノートラックだ。

うひょ〜!

ありえないぜ!

後ろ髪を引かれつつナマコ尾根に移動。 ここで、自然界にあるものを使って10分以内に作れる屋根付きの堅固な自然構造物式雪洞をチャチャッと作って、そのなかで昼食。なんと10分で作れるうえ、6人全員が中に入っても余裕があるというスグレモノなのだ。

続いてオーソドックスな横穴雪洞を2つ掘る。みんな自分たちの持ち物をうまく使って短時間で効率よく、なかなかいいビバーク穴を作ってくれる。

〈上写真〉穴に潜り込んでみる。入口は狭く作っているが、中は案外、広いのだ。

それにしても、オルトボックスの新しいショベルはなんという切れ味なのだ! ショベルがまるで刃物のように、雪がスパスパと怖いくらいに切れてしまう。

夕方からは課外授業。ガイドの山小屋の店内で三段山クラブの大西さんが十勝連峰の雪崩事故についての報告や事故事例などの報告会をしてくださ った。白い壁がスクリーンになり、生々しい雪崩事故の様子が映し出される。

大きなテーブルを囲んで大西さんの話に真剣に耳を傾ける。戦慄の内容だけど、こういう機会は滅多にないからみんな真剣だ。

〈写真〉参加者だけで作った雪洞。入口はツェルトで塞いだ。秘密基地を作るみたいで楽しい!

常に危機感をもつこと。これが事故に遭わない、生還するために最も必要なことだと思う。


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