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2007年12月26日(水)

十勝連峰の森林 三段山の樹林帯のこと

十勝連峰、三段山の標高1300m付近、森林限界近くの樹林帯は伐採の手をのがれた原生林です。

いまから15年ほどまえ、この原始の森を冬に歩きたいという強い思いから、

「十勝岳山麓バックカントリーツアー」が生まれました。

ときどきエゾライチョウが飛び出してくるこの森は、それはそれは美しい森でした。もちろん今でも何も変わらず、と言いたいところですが・・・。

残念ながら、この一帯の原生林にはいま、見苦しいビニ-ル製の標識テープの華が咲いています。ひらひらと風に舞う蛍光色ピンクの下品で見苦しい物体は、ルートづくりに自信はないけど背伸びはしてみたいスキー登山者が、先行する誰かの足跡を辿りながら木々に吊るしてまわり、次回のために目印として残置していったものです。

そのビニールの量は(過去の撤去の経験から)軽くゴミ袋2個分くらいになることは珍しくありません。もちろんこれらは森のなかに放置されたビニールのゴミです。

ちなみに、ちゃんとした登山家の間では「ルート旗(目印)」は下山時に回収することになっており、また万一の未回収のために一つ一つに連絡先を書いておくことが常識となっています。

ところで、ルート選びに自信がないのならば一般ルートを外れるべきではないし、そもそも冬山に来るべきではないし、だいいち一般ルートではない場所に他人を誘導する標識を作ってしまうことは、迷惑を通り越して極めて危険な行為ではないかと考えます。

いまでは広く知られつつあるこのルートですが、前述のように決して一般ルートではありません。もとは10年以上前から僕がツアー引率で使っていたプライベートなルートでした。秘密のルートというわけでもありませんが、特に誰かに関心を寄せられることもなく1999年くらいまではこの森を歩いていて人に出会うことはまずありませんでした。また、ここは悪天候でも安定していて、強風や霧に巻かれることなく安全です。初心者を連れて歩くことが多い僕には理想的な場所だったのです。

ある日、ここが「静かでいいよ」ということを地元の友人たちに教えたことがきっかけでインターネット等を通じてあっと言う間に情報が広がっていきました。

そして、ついに今日では原生林の樹々の枝に吊るされた無数のビニルテープ(しかも下品なピンク色)が咲き乱れる事態に至りました。当時はまだ、ボクも友人もインターネットの潜在的な力を十分に理解していませんでしたから、まさか10年もたたないうちにこうなるとは思ってもみなかったのです。

静かな原始の森が汚れていくきっかけを作ったのは、何を隠そう自分だったという、まぎれもない事実に対して、いま重大な責任を感じています。

原生林の美観のためにも、また事情を知らないスキー登山者が迷宮のような森に迷い込まないよう、冬山の安全のためにも次回以降はこれらを少しずつ撤去したいと思います。

罪滅ぼしにはほど遠いのですが、何もしないよりはマシかと思います。何もしないで嘆いてばかりはいられません。何かやらなければ!


2007年12月25日(火)

きょうの美瑛岳山麓 十勝岳山麓バックカントリーツアー

天候:くもり時々晴れ のち雪
風向:北西 時々やや強い風
気温:-2℃前後
雪量:50〜100cm
雪質:ふんわりパウダー
深雪:ラッセル30cm
備考:積雪やや不足気味

〈十勝岳の噴火活動〉

未確認

 

朝は良い天気でした。

渓流の河畔の廃林道には、さっき白金温泉ですれ違った学生たちが数日前に残していったと思われるスキー跡が残っていて、ありがたく使わせていただきました。おかげで前半のラッセルは非常に楽でした。

森のなかは前年とは印象が少々違っていて、記憶どおりのルートとは若干違っているような気がしました。倒木などが増えたせいですが、雪が少ないことも影響していると思われます。積雪高によって視界がかなり違ってきますから。

雪の質はとてもよく、メレンゲのようなふわふわ感がたまりません。

僕はきっと、嬉しくて仕方がないといった顔をしていたと思います。

正午前、冬至の太陽が木々の間から降り注ぎます。なんというお日様の低さでしょう!まるで夕方みたいです。

新しい板は登り力も滑降能力も今までの比ではありません。お客さんは大喜びだし、引率のボクも楽だし、みんなで一緒に楽しい気分になれるというこの一体感が何より嬉しい!

森のなかの雪はとてもとても良いです。ガンガンに滑るには足りないと思いますが、やさしく滑るには何の問題もないと思います。

さて終盤、スキーで森のなかをするすると下り始めたとき、突然、目の前にあるはずのない深い谷が現われてビックリ!

どうやらルートを100mほど間違ったようです。

びっくりしたー。

シーズンの序盤くらいはGPSを使ってみようかと思った出来事でした。


2007年12月24日(月)

クロスカントリー 美瑛の丘をテレマークスキーで歩いてみました

良い天気です。ああ眩しい!

今シーズン始めてのクロスカントリーのツアーです。クロスカントリーとは、日本語でわかりやすく言えば、「田舎道の散歩」でしょう。

ずばり、クリスカントリースキーという道具があります。散歩用のスキーで軽量で歩きやすいスキーですが、近年のクロスカントリースキーはどんどん細くなり靴も またスポーツシューズのようになり、競技を意識した外見ものばかりになってしまったような気がします。

細すぎるクロスカントリースキーは、ちょっと散歩には向きません。だって足元がグラグラします。

そこで僕は、今年からクロスカントリー(田舎道の散歩)はテレマークスキーを使うことにしてみました。きょうはその第一回目。

ああ、やっぱり思ったとおり。幅が十分なテレマークスキーは歩くのに適しているうえ、軽量なので具合がいいのです。またテレマークスキーは基本構造はクロスカントリースキーと同じ仕組みなので歩くにはとてもいいみたい。しかも、幅が広いおかげで安定していて、初心者でも「怖くない」 ようなのです。

これはいい!

いったんテレマークスキーでツアーをやってしまうと、もう競技用のようなクロスカントリースキーでツアーをする気にはなれません。格段にラクですし、比べ物にならないくらい楽しいから。

ところで、クロスカントリースキーは値段がとても安いので(1セット2万円もしないうえ10年以上使えるんです。タダみたいなものです)僕らのような「業者」にとっては「ボロ儲け?」なんですが、肝心のお客さんが楽しいかどうかは以前からちょっと自信がなかったんです。

実際、ボロボロになるお客さんを何人も見てきましたから。

でもこれで自信がつきました。これは楽しい!初心者でも大丈夫!(と思う)

やっぱりテレマークスキーって、すばらしいです。

ただし、テレマークスキーでクロスカントリースキーのように「走る」のはちょっと無理かな?「走る」のはやっぱりクロスカントリースキーがいいと思います。

※ウロコ板とよばれるステップソール加工の板を使っています。歩く、登る、滑る、全てをこなす万能なスキーだと思います。


2007年12月23日(日)

きょうの三段山 十勝岳山麓バックカントリーツアー

天候:晴れ
風向:無風
気温:-4℃前後
雪量:100cm前後
雪質:やや重めながらパウダー
深雪:ラッセル40cm
備考:積雪やや不足気味

〈十勝岳の噴火活動〉

平穏

 

年末年始には珍しく、良い天気です。

年末年始の雪といえば底がルーズでズブズブと埋もれていく底なし地獄のラッセルに見舞われるのが普通なのですが、今年はしっかりした底地ができています。気温が高めのせいか雪はやや重たいものの、それでも例年と比べるとラッセルはかなり楽です。

まだ積雪が安定せず、量も不足気味。地形の凹凸が雪面に反映されていて、滑るにしても歩くにしてもルート取りに苦労します。

ブッシュ(低木)がまだ十分に埋もれていません。せめて、あと50センチくらいの積雪が欲しいものです。低木の繁みによってルートは寸断気味。特に滑るときのルートは限定されますし、高山帯ははっきり積雪の不足が感じられます。剥きだしの岩肌も見られます。樹林帯も思わぬところがブッシュによって通行不能であったりします。

雪質は概ね良いですが、穴ぼこがたくさんあるので参った参った。


2007年12月21日(金)

雪の季節、新しいテレマークスキー

2ヶ月ぶりに帰ってきたらガイドの山小屋の建物もガレージ群もすっかり雪化粧していて、見慣れているはずなのになんだか何年もここを離れていたような変な気分になりました。

すっかり冬になりました。

帰国していちばんにやった仕事は、夏ごろから秀岳荘旭川店に注文していたテレマークスキー10セットを受け取りに行ったこと。

そうなんです。レンタルのテレマークスキーが新しくなったのです。

バックカントリーツアーのレンタル板は、カルフガイド(Dimensions 109-78-95)になりました。ぐっと太くなってパフォーマンスも向上しましたから、上手なひとはより上手に、初心者は一層ラクに上達することでしょう。

近年の道具の発達はめざましいものがあり、大して練習する必要もなく、あっという間にそこそこに滑れるようになっちゃうんですよね。この板もそういう道具なのです。

きょうは新しい板をスキー立てに並べました。すっかりスキーが増えてしまったので端材などを使ってスキー立てを作りました。ずらりと並んだカルフガイドは、う〜ん・・・なかなかのものです。

いよいよ明後日はリニューアルした今シーズンのツアーの初日なのです。いやいやもう、とっても楽しみなんです。


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