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2006年1月31日(火)

きょうの三段山 めざせ!新コース でもあっさり敗退

天候:雪
風速:ごく弱い南?の風
気温:−4℃前後
雪量:2m以上
雪質:湿っているが、軽い雪
新雪:40cm前後
備考:わずか標高600mで敗退。

〈十勝岳の噴火活動〉

未確認

 

きょうは新コースの開拓を行ってみる。いつもの十勝連峰からは離れて、かねてから行ってみたいと思っていた山を目指した。天気はいいはずだったが、朝から大粒の雪がぱらぱら降り続いている。気温はこの時期としては高め。

渓谷沿いに入山するが、早々から小さな雑木が多くて非常にうるさい。小枝を振り払いながら進むが、熊笹のうえに積もった弱い積雪層に何度も足を突っ込んで思うように進めない。やっとブッシュを抜けたと思ったら、こんどは植林して20年に満たない小径のエゾマツに行く手を阻まれる。さらには生垣のように生い茂ったシラカバの幼木群が乱立して邪魔をする。イライラ、イライラ・・・・。

渓谷を脱出してなんとか尾根に取り付こうとするが、なかなかうまくいかない。ほんの50m前進するのに悪戦苦闘する始末。おまけに周辺の森は貧弱で、生き物たちの生活をまるで感じられない。せいぜいエゾリスの足跡があるくらいで、ウサギや、エゾ鹿すらもこのあたりにはあまり寄り付かないらしい。魅力がないということか。

暑い。暗い。面白くない。

さっさと敗退をきめた。

新コース開拓なんて、最初はこんなものだ。こういう実りのないことを何度も何度も繰り返してようやく数年に一度くらい、まあまあ使えそうなコースができあがることがある。奇跡といっていい。

でも、そうやって完成させたコースも、実際にツアーに使い始めるとあっと言う間に人に知れ渡ってしまう。何度も迷走を繰り返した末にやっと完成させたコースに、自分以外のスキートレースが多数交じり合うのを見るのはやはり複雑なもので、だからつい、いつも同じコースを繰り返してしまうことになる。バレちゃった場所は仕方ないのだ。特に三段山。それから富良野岳。正直いってすでに秘密の場所なんてどこにもない。よほど奥まで進めば別だけど、一般的ではないしリスクが増す。

新しいフィールド探しは楽しい。しかし、思いは複雑だ。理想郷はなかなか見つからない。


2006年1月30日(月)

一応、アウトドア・ガイドなんだけど

僕は専業のアウトドア・プロガイドで、キャンプから山登り、MTBやカヌーやラフティング、冬山ガイドまで、これまでできることは何でもこなしてきた。

でも、それだけで収入をえて生活を支えていくことには難もある。正直いって、ちょっと苦しい。

ここ10年ほど暫らく専業のプロガイドをやってきたけれど、5年、10年先のことを考えると先行きは明るくない。 そろそろ年齢も感じるし、子供は大きくなっていく。そこで近年は他の仕事もはじめた。僕のオフィスは「会社」なので、他業種への参入も可能。もちろん個人でビジネスをすることも出来る。ま、それは誰でも同じことだけど。

しかし悩みも尽きない。「ガイド」という仕事は比較的ピュアな自分でいられるけど、ほかの仕事をしているときの僕はやっぱりビジネスマン。ここんとこ、自分は鬼なんじゃないかと思うこともある。

ふと我にかえると、やっぱりガイド業がいいなあ・・・と痛感する。

ガイド専業だったころと比べると経済的には少し楽になった。もし、以前のままだったらと考えると、ちょっと怖いものがある。だからもう戻れない。

僕はプロガイドのなかでは決して収入の少ないほうではないようだけど、それでもたまに古い友人に再会すると、じわり広がった「差」に焦りを感じることもあるのだ。友人たちもそろそろいい歳だから経営者だったり会社の責任あるポジションにいる。みんな知的でかっこいいオッサンになりつつある。そしてみな、子供のことでいろいろ悩んでいるのだ。

僕も、いつまでもノンビリしてはいられなくなってきた。

う〜ん・・・。

ガイド会社をやりたいひとはあとを絶たないようだけど、もう一度、よ〜く、考えたほうがいいですよ。


2006年1月29日(日)

きょうの三段山 嫁姑戦争勃発

天候:くもり 午後一瞬の晴れ間
風速:ごく弱い西の風
気温:−8℃前後
雪量:2m以上
雪質:もさもさしているけど、まあ良好
新雪:50cm前後
備考:雪の締まりが進んできた。雪がもさもさしている。

〈十勝岳の噴火活動〉

いつもと同じで活発

 

晴れという天気予報だったが、山の天気ははっきりしない。山頂は見えないが、概ね視界よし。雪も降らない。何も問題はない。

まず白銀荘に行くが、駐車場にはすでに登山者の車がたくさん停まっている。きょうも入山者が多いようだ。ここでは登山名簿に記入するだけに留めて、入山場所は変更する。

富良野岳の登山口になっているバーデン前の駐車場も満車になっているが、それでも昨日よりは若干少ないように思う。

まずは雪原を歩きはじめる。昨日、僕らが刻んだトレースの周辺にはいつの間にか多数のトレースが何重にも絡んでいる。あれから何事があったのだろう?たいして面白い場所でもないのに。

いっぽう、登り始めて1時間後にたどり着いた「面白い場所」には昨日の僕らのトレース以外の痕跡は見当たらない。ホッと安心。お目当ての斜面にたどり着いたらすでに荒らされた後 だと非常に落ち込む。だからフィールドの無事を確認すると安堵する。いつものことだ。

登りでは多少苦労した場面もあったが、きょうの参加者はみんな滑れる人だったのでツアーはさくさく進む。さいきん樹林帯ルートには人が少ない。おかげで思いどおりの場所を広く使って滑りを楽しむこともできた。

1時過ぎには全員フィニッシュ。大満足の1日だった。

しかしながら、ガイドの山小屋に帰ってみると裏方で嫁と姑が戦争をはじめていた。元医師の母はとても気が強い。大手電器メーカー勤務のOLだった妻も負けてはいない。以前から密かな冷戦状態にあったことは承知していたが、ついに全面戦争に突入したらしい。一気に疲れる。元広告代理店AEだった僕は一切知らんぷりを決め込む。オレ関係ないもん。

いま一番ほしいもの、それは平和。

ピース V


2006年1月28日(土)

きょうの三段山 行列ができる三段山と富良野岳

天候:霧
風速:南西の風弱い
気温:−8℃前後
雪量:2m以上
雪質:やや湿り気を帯びたパウダー
新雪:60〜80cm
備考:南の風が運んだ湿気が濃い霧を発生させ、全山を覆ったらしい

〈十勝岳の噴火活動〉

見えない

 

極端に視界不良な今日の三段山だが、 視界が悪いだけで風もなく雪もあまり降らないので予定通り稜線越えのルートで出発する。

昨夜は三段山クラブのAさんと酒を飲みながら遅くまで楽しい話に花が咲いた。つい飲みすぎてしまったようで、いまだ頭と胃腸のなかに昨夜の酒が残っているらしい。車の運転はU塾長に任せ助手席の僕は「うっ!」と吐き気をこらえる始末。しかしながら、雪のうえに立つと気分爽快になった。やはり粉薬は百薬の長なのだ。二日酔いにも効果効能抜群です。

それにしても富良野岳登山口の駐車場が凄いことになっている。おなじみのローカルの錚々たるメンバーに加えて老舗の山岳ガイド会社の商業ツアーやそのほかの商業ツアーも押し寄せているようだ。駐車場からはみ出している車までいる。たった1週間のうちに突然、大変な賑わいになった。ドカ雪でも降らない限り、当分は気持ちよく滑ることができるバーンは残っていないのではないだろうか。U塾長は「4、50人くらい入ったんじゃないか?」と言っている。

いっぽう、僕たちのルートはきょうも閑散としている。車の回送が必要なことや激しいラッセルを要求される面倒な難所越えがあることから、このルートは一般には敬遠されることが多い。おかげでいつも静かだ。もちろん斜面はすべて手付かずのまま。

きょうのラッセルは膝前後。雪は軽いので楽々だ。先週のドカ雪を経験したあとだから、膝ラッセルくらい何でもない。吹き溜まりの胸ラッセルも別にどうということはない。それに、膝ラッセルということは、オーバーヘッドなパウダーがその先に待っているということだから、大歓迎。

期待は裏切らない。文句なしのオーバーヘッドパウダー。南の風の影響をうけて少々湿気を帯びてはいるが、滑りは悪くない。

もはや雪の量は十分だ。西の谷もいいカンジに埋まってきた。そのほかの重要な沢筋もようやく深く埋まったから越えるのが楽になった。しっかりした下地もあるので、ズブズブ埋もれるという事もない。これならば5月まで楽しめるだろう。

ようやく三段山らしくなってきた。

ただし正面登山道ルートは大変なことになっている。きょうの入山者はいったい何人だったのだろう?50人?100人?まるで観光地みたい。まあ、何十何百という登山の人々のスキーで斜面が圧雪されて、それがいい頃合いだと考える人にとってはいいかもしれない。


2006年1月27日(金)

雪がとけて道路はえらいこっちゃ

きょうはツアーが休みになったので出産を間近に控えた妻を旭川に連れて行く。美馬牛から旭川の病院まではタクシーで行くことにしていたから、きょうのツアーの休みはとても有難かった。

実は、半日のツアーで得る売上よりも美瑛―旭川間のタクシー代のほうがはるかに高いから、参加者がいないことは憂慮すべき事と思いつつ、きょうだけはホッとした。文字通りの「不幸中の幸い」というやつ。

でっかい腹をさすりながら助手席に乗り込んだ妻と賑やかなおしゃべりをしながら旭川へ向けてドライブ。きょうは気温が上昇し国道237号線は雪がとけて、通行する車は水しぶきをあげながら走り回っている。どの車もどえらいことになっている。汚れた水しぶきのおかげで皆どろどろ・・・。もちろん僕の車もたちまちのうちに泥々になった。まるで春の雪解けのようだ。

妻の経過は順調だった。来週中には3人目の娘が生まれるかもしれない。ついでに僕も整形外科を受診する。昨年の1月、全治10ヶ月の大怪我をしてちょうど1年たった、きょうが最後の検診になる。診断結果は「完治」。

道路はえらいこっちゃだけど、気分は晴れ晴れ。いいことずくめの2006年だと思う。気分もまた春のようだ。


2006年1月26日(木)

旅はいいなぁ・・・ MTBでGo!北極圏へ

はやくも今年の秋の旅はどこへ行こうかと思いを巡らせる。

秋のMTB旅は、冬に向けたトレーニングと外国語の習得を一度に、しかも安上がりに得られるから恒例にしたいと考えている。世界地図帳を眺めながら、物差しをあててざっと区間距離を測ったりする。気が早いとは思いつつ、インターネットで航空路の路線を検索してみたり。

今年のMTB旅はアラスカ・ハイウェイを走ろうか。晩秋の北極圏を、迫り来る冬に追い立てられるようにせっせとMTBのペダルを漕いで南下するのだ。アラスカのフェアバンクスを出発してカナダ・ユーコン地方を南下する。カナディアンロッキーを縦断する。カルガリーか、バンクーバーあたりをゴールにしたい。

ふと外をみると、美馬牛は粉雪が降りしきっている。ユーコン地方の冬ってどんなだろうか。熊は冬眠しているだろうか。

冬の夜長、そんな思いにふけるのも悪くない。

※その後、インターネットでの情報収集で10月下旬のフェアバンクスの気候は、最低気温−10〜−20度であることを知る。11月のアラスカハイウェイはMTBにはちょっと厳しい・・・。


2006年1月25日(水)

山ぶどうのワイン

2003年の秋に仕込んだ山葡萄のワインがある。仕込んだあと、ずっと地下室に寝かせておいた赤ワイン。久しぶりに飲んでみた。

作り方は簡単だった。確か以下のような流れだったと記憶している。きっと誰にでも作れると思う。

 

@10月、山ぶどうを収穫

美馬牛周辺の森で採取した

 

A枝を取り去って果実だけにする

ブドウの房は洗いすぎると酵母まで洗い流れてしまうので、ほどほどに

 

B絞り作業 

妻が踏んで果肉を潰し、果汁を抽出した

 

C寝かす

ときどき、まぜまぜする

 

D発酵 

果実の表面が白く粉をふいたようになっている。これが天然酵母。これが勝手に発酵をはじめる

 

E11月、できあがり

酵母によって果実の甘味がアルコールに変化する発酵過程は気長に続ける。仕込んでから1ヶ月くらいでワインと呼べるものになるが、まだまだ渋みが強いので寝かせておいたほうがいいと思う。

 

2003年のクリスマス前後にはまだ渋みがキツイと感じた山ぶどうワインだったが、あれから2年以上の月日が流れた。その間に熟成が進み、実にまろやかになっていた。酵母はいまだに生きていて、瓶の底に沈殿している。常温にすると沈殿している澱から気泡が発生し始める。酵母が活発に生きている証拠だ。

元手はもちろんタダだが、いまではとても値段はつけられない。

とてもとても美味な、天然の山ぶどうワイン。今夜もちびちびと・・・。


2006年1月24日(火)

きょうの三段山 良い雪、良いパウダー

天候:雪
風速:西の風
気温:−10℃前後
雪量:平年よりやや多め
雪質:軽いパウダー
新雪:50cm前後
備考:先週末のドカ雪がいい感じに締まってきた

〈十勝岳の噴火活動〉

見えない

 

あいにくの天気、降りしきる雪。きょうは白銀荘から出発する。すっかり主要道路になった登山道中央のトレースを、まずはせっせと登る。先週末のような雪の壁は ない。強い寒気と昨日の強風で雪は一気に締まってきたようだ。

2段目を越えるとあたりは真っ白になる。いつものお約束だ。風もある。雪はややウィンドパックされている。

登山者は結構多いのに、なぜか誰もが登山道の上を滑っていて、登り道の右左の脇あるいは周囲にあるおいしい斜面はことごとく真っサラで残っている。ほとんど労することもなく、気持ちよくパウダーをいただくことができる。

ラッセルは膝程度だから大したことはない。ただ、中層あたりに湿り気を帯びた雪の層があり、ちょっとモサモサしてカンジ悪い。でも、表層はすばらしく軽い羽毛パウダーだ。滑りは快適そのもの。

登山道を大きく迂回して、くじら尾根方面の森に進む。大きなエゾマツの根にできた洞で昼食をとり、森のなかを滑る。ここも雪質がすばらしい。

まもなく、土曜日に僕がラッセルしたトレースに出会う。このトレース開削には大変な苦労をした。ずっと腰まである雪を押してルートを造ったのだが、きょう見ると左右の雪壁は膝程度まで圧縮されている。トレース から外れても、もう雪に埋もれることなく、すい〜すい〜と森のなかを滑っていくことができる。

たった3日間で、随分と変わるものだ。驚いた。

途中で知り合いのネイチャーガイドが開削したトレースに出会う。かなりの苦労のあとがうかがえる決死のトレース、同じ仕事をしていると、トレースを見ただけでその苦労が伝わってくる。その苦心のトレースを一部使わせてもらった。ルートの採り方にはその人の性格やツアー参加者への 気配り度合いがはっきり現われるもので、自分の感性に適うトレースはぜひ使わせてもらいたくなるもの。僕も自分の性格にあわないトレースは無視するが、「お、いいじゃん!」と思うトレースは使わせてもらっている。だからもし、僕のトレースに も価値を見出してもらえるならば、じゃんじゃん使ってもらいたい。

こういうのはラッセル泥棒とはいわない。ただし、先行するパーティやツアーを一定距離を保ちつつ追跡してくる人たちは「ラッセル泥棒」と呼ばれても仕方がないだろう。しかし、 時には自分が追跡の立場に回ってしまう場合もある。そういうときはなるべくならば追いついてお礼のひとつも言いたい。 追いつけないときはすれ違いざま丁寧に挨拶したい。それだけで一気に場が和むから。

そのまま楽勝ムードで白銀荘へとフィニッシュ。雪たっぷり、雪質抜群、当分は気持ちよく遊べそうだ。

羽毛のように軽いパウダーがしんしんと降り続いている。


2006年1月23日(月)

スキーシューで歩いてみた

META
1002 カルフメタ \44,100
(本体価格\42,000)
Size : 120cm
Dimensions : 135-110-120
Weight : 3500g / ペア

※滑走面のシールは固定で取り外しできない

 

次期に導入を検討しているスキーシューを試しにツアーに使ってみた。

〈良い点〉

・なんとなく、かっこいい。これ重要!

・動きがスムーズ、小回りがきく

・安定が抜群

・優れた登り性能

・思った以上に軽い乗り心地 クロカンとかわらない

・どんな靴にでも装着が可能 僕は長靴で使ってみたが問題なし

・見た目以上の優れたラッセル性能

〈問題点〉

・装着に時間がかかる。面倒。きっと参加者全員の装着をガイドが手伝う羽目になる。それだけでツアーの時間がなくなってしまうことも考えられる。

・スキーの形はしているけど滑らない。あくまでスノーシューの代用に留まる。

・ビンディングの位置が前すぎ。これでは山には使えない。変更もできない。

・絶対的な浮力が足りない。致命的欠陥。少なくともガイド用には向かない。参加者レベルならば問題ないと思うが、男性にはやはり浮力が物足りない。

・値段が高いが、それほどの価値が見出せない。適正価格は2万円台

 

「スノーシュー」か「スキーシュー」か、どちらが良いかと問われれば絶対、このスキーシューのほうがいいと感じた。

が、しかし、決してスキーの変わりにはなり得ない。たとえクロカンであってもやっぱりクロカンのほうが楽しい。テレマークスキーとは比べるべくもない。

もちろん初心者にはいいと思うのだが、「楽しい」と感じるレベルまでには達しない。ハマることはなさそうだ。

ガイドツアーの主催者にとっては失敗のない無難な道具といえる。例えば自然観察ツアーには従来のスノーシューよりも断然、利用価値が上がると思う。でも、「楽しさ」を優先したい僕のツアーの性格にはちょっと合わない。笑いの壷にハマらないのだ。

・・・導入を見送った。


2006年1月22日(日)

きょうの三段山 粘っこい深雪

天候:くもりのち晴れ
風速:西の風
気温:−10℃前後
雪量:平年よりやや多め
雪質:重いパウダー(湿気多)
新雪:70〜100cm
備考:まだまだ深すぎる

〈十勝岳の噴火活動〉

通常どおり

 

昨日よりは多少落ち着いたかに見える。しかし、相変わらず深い。深すぎる。深くて粘っこい。まるで本州の雪のようだ。

森林限界より上はややウィンドパックが見られるが、なにしろ深いのでウィンドパックされた雪はスキーの抜けが悪くて苦労する。小さな沢や潅木は埋まってしまったから、風景はとてもいい。

三段山の正面にはこのドカ雪直後の昨日、僕らのツアーと先行者の男性が刻んだトレースが2段目上まであったのだが、今朝はその溝のような狭いトレースに登山者全員の長蛇の列が連なっていてちょっと驚いた。なにしろトレースから出ると1mラッセルが待っている。だからみんな溝から出られない。

2段目から上は2日間続いた風の影響で積雪は少なく、ラッセルもせいぜい膝下までだから楽に歩ける。きょうは上々のお天気だったから頂上まで行った人もいたと思う。日曜日のきょう、入山者はとても多かった。

しかしながら気になることがある。なぜかほとんどの人は入山者名簿に記入しない。山岳会ふうの人たちもやはり記入しない人が多数を占める。なぜ記入しないんだろう?もし万一何かがあったとき、「入山名簿に記入していなかった」ということはマスコミやワイドショーによる格好の攻撃ネタになるはず。万一に備えてそういうツッコミどころを少しでも減らしておいたほうがいいと僕は思うのだけど・・・。タダなんだし。

プロのガイドツアーや、その道のベテランはちゃんと記入してある。やはりそのへんを心得ているということだろう。どんな場合にも常に危機感を持ち続けるのは必要なことではないかと思う。

いやいや、入山届を出さない人は100%遭難などありえない凄いベテランなのかもしれない。きっとそうだ。自信があるに違いない。

そのわりには、他人が作ったトレースから決して出ようとしないんだけどな。

富良野岳にも中央ハイウェイのような立派な登りトレースがあるという。僕は初心者なのでプライベートで山に行くときはこのハイウェイを有難く使わせてもらう。もちろん遭難しないという自信もないし、困ったときには誰かに助けてもらいたいから入山届には記入しておく。それだけでもかなり気休めになるから。


2006年1月21日(土)

きょうの三段山 本気の1mラッセル

天候:雪
風速:南西の風
気温:−8℃前後
雪量:豪雪
雪質:やや重いパウダー(本州っぽい)
新雪:100〜130cm
備考:いくらなんでも深すぎる

〈十勝岳の噴火活動〉

見えない

 

ストックの長さは115cm ストック先端の右はスキーを抜いた跡の穴 

ともかく凄い雪だ。 3日前の水曜日のコンディションは見る影もない。歩き出して驚いた。ものすごいことになっている。白銀荘前の時点でラッセルは1mに達する。先行者のトレースを使わせてもらって、とりあえず1段目まで進む。

1段目からは塾長の班と分かれて独自ルートに変更するのだが、トレースを出た途端に待っていたのは1mラッセルだった。足の付け根まで埋もれながら深雪のなかをもがき苦しむ。太腿で押し出すような感じで先へ進む。ちょっと、命の危険すら感じる。一人ですべてルートを開削することには無理があるかもしれない。

僕の記憶がある限り、少なくとも過去5年間では最高積雪だと思われる。もちろん、いつだって部分的に「腰ラッセル」だの「胸ラッセル」だのいうことはあるのだが、それは多分に吹き溜まりや風下など限定的なもので、このように全域に渡っているわけではない。しかし、きょうの場合、いつもならば「腰ラッセル」だの「胸ラッセル」だのいって無邪気に喜ぶ部分的最深部では、新雪への埋没が身長に達してしまう可能性があるので迂闊に吹き溜まりには近づけない。洒落にならない。

埋没はヘソに達している。ルート開削は困難を極める。

それでも樹林帯の急斜面ではオーバーヘッドパウダーを楽しめたし、くじら尾根では参加者の協力もあり登り返してこの歴史的深雪を滑ることができた。しかし、帰るころにはちょっと疲れてしまっていた。どうやら、はしゃぎすぎたらしい。

風の影響をうけにくい森のなかではラッセルは120cmに達する。もうここまで来ると本気モード、本気ラッセルを始めなければならない。ふだんのツアーではパワーは常に温存しているので能力の半分も使っていないのだが、きょうはラスト30分、前十勝からの帰りルート、くじら尾根方面からは僕はついに本気でラッセルをはじめた。雪は常にヘソのレベルにある。斜面を横切るときには胸を越える。信じられない新雪の積雪量だ。これまで膝ラッセルだとか腿ラッセルだとかいって騒いでいたことが馬鹿馬鹿しい。

少なくともこれから1週間はこのような状況が続くと思われる。早くこの新雪がぎゅっと締まって状況が落ち着いてほしいというのが正直なところ。


2006年1月20日(金)

疑惑

ちょうど1ヶ月前に、ガイドの山小屋の屋台骨を揺るがす大事件が起こった。

そこらへんに放置してあった僕の財布を1歳半の次女が見つけてもて遊んでいた。札やらカードを放り出して散らかす、小さな子供のいる家庭ではよくある光景。小銭を口に入れたりお札を破いたり食べたりしない限りは、まあ許せる。

言葉を覚え始めたばかりの次女はいま、「はいどうぞ」がマイブーム。「はいどうぞ」と言いながらいろんなものをくれる。そのときも妻に僕の財布から出てきた1枚の、どこかのレシートを渡したようだ。僕が風呂に入っている間の30分くらいの出来事である。

はいどうぞ!といって娘が何気なく妻に手渡した1枚のレシート。その、レシートが問題だった。

それはとあるデパートのもので、明細欄は「婦人小物」、そして気になる領収金額は、18万円と刻印されていた。妻は顔から血の気が引いたという。そのとき僕はまだ風呂にいて、鼻唄まじりにのん気にシャンプーなどしていた。

婦人小物?18万円?夫婦の絆なんて一瞬で崩れる。レシート1枚で十分なのだ。僕が上機嫌で風呂からあがったとき、妻は怒りでわなわな震えていた。僕には昔、ちょっとばかり前科前歴があるだけに、どうやらあまり信用はされていないらしい。妻はおそろしい顔で僕に詰め寄ってきた。氷のように冷たい口調で静かにこう言った。

「何これ?誰にあげたのよ?」

「あわわわわ、そそ、それはさ、ちちち、違うよ・・・」

あまりに唐突だっただけに僕はすっかり狼狽してしまって、あらぬことを口ばしっている。それがさらに疑惑を確信へと導いてしまう。

実は、それは僕から妻へのクリスマスプレゼントだったのだ。2005年はほんとうに大変な年だったのだけど、妻の献身的な内助のおかげですべてがいい方向に進み、最終的にはとても幸せな年の瀬を迎えることができた。おまけに妻は翌月に出産を控えていた。2005年の年末、僕はとても満ち足りた気分で幸せだったのだ。せめてそのお礼にと、僕は今までにないとっておきのクリスマスプレゼントを秘密裏に用意した。 更にこの年、僕らは交際をはじめて20年を越えた。その節目もふくめて、僕ができる精一杯の感謝をこめたクリスマス・プレゼント。12月25日、妻が目覚めると枕元にはプレゼントが置いてある。きっとびっくりするはずだ。当然、妻は僕に何々何々!!!と問いただすに違いない。そのとき僕はそ知らぬフリでこう答えるのだ。

「サンタさんじゃないの?オレは知らんよ」

こうなるはずだったのに、あああああ・・・・・。

 

阿鼻叫喚の風呂上り、僕は悪いことをしたわけでもないのに言い訳に終始している。うろたえながら必死に説明している。ほんと、バカなおれ。

小学4年生の長女は危険な雰囲気を察してさっさと自分の部屋に避難している。1歳半の次女だけは能天気に、相変わらず財布の中身を引っ張り出して遊んでいる。おいおい、おまえが悪いんだぞ・・・!

ガイドの山小屋の屋台骨はけっこうモロイ。


2006年1月19日(木)

「先生」になるのはちょっと・・・。

最近、ときどき困ることがある。

講演を頼まれたり、解説を頼まれることがある。2、3日前にも1件あった。

10年間この仕事をやってきたんだけど、10年前、自然ガイドとかアウトドアの仕事は一般的ではなく、ベンチャーな領域だった。今でこそアウトドア屋さんは乱立気味だけど、ほんの10年前までは同業の誰もが手探りだったのだ。

10年間試行錯誤ばかりでドンチャンやって、いつまでも若造のつもりだったのが、気がつけばそれなりに古株になっていた。そう、いつの間にか・・・。

古株になってしまったせいで講演依頼が巡ってくるのだろうが、多くは夏なので繁忙期を理由に今のところは断っている。が、しかし自分としては多忙を口実に逃げ回っているような気がしないでもない。

実のところ人前で話すことにはまったく抵抗はない。夏には大型バス満員の客を前に業務をするから慣れっこだし、きっとオモロイ話で会場を盛り上げることができる。失敗談はいくらでもあるからネタには困らない。話の引き出しだったら、いくらでもある。しかし困るのは「講師」として人様の上からモノを言わなければならないことだ。

人様の上からモノを言うのは断じて困る。というのも、僕が常に師と仰ぐYさん(故人)には壇に立つイメージがない。 いつも僕らと同じ目線で話してくれた。そんなYさんと180度違う方向に進んでしまうのはちょっと困るのだ。僕がYさんにはなれないことはわかっているけれど、スピリッツだけは持ち続けたいし、できることならば真似っ子していたい。 だいいち人に訓を垂れるなど40年早い。

しかし、いい歳のオッサンになりオトナの世界にいる僕の社会的な立場がいつまでも逃げ回ることを潔しとしないので、今年は引き受けようと思う。トーキョーとかオーサカとかの片隅で僕がトークを炸裂させる日がくるかもしれない。

最近の僕はYさんから教わったスピリッツを失いかけている。最近特にそれを感じているだけに、僕は試されているような気がしている。こういうときYさんならどうするだろう?


2006年1月18日(水)

きょうの三段山 吼えろ!AKロケット

天候:雪のち晴れ
風速:西の風
気温:−15℃前後
雪量:たっぷり
雪質:深雪羽毛パウダー
新雪:30〜60cm
備考:間違いなく今季最高のコンディション ただし寒い!

〈十勝岳の噴火活動〉

未確認
 

今朝の美瑛は雪。ときどき視界が極端に悪くなるあいにくの悪天候、あまり期待せずに出発する。しかし上富良野に入った途端に富良野盆地は眩く晴れていた。驚いたというより狐につままれたような感じだ。

きょう札幌から友人がやってきた。プライベートなバックカントリーツアーなので2人でがしがし行こう。営業ツアー用の板ではなくAKロケットを履いて出発、遠慮なくがしがし登る。この1週間、日曜日を除いてずっと雪が降り続いてきた。積雪は飛躍的に増してもう雪不足の片鱗はうかがえない。やっと十勝連峰らしくなってきた。膝下くらいのやや深いラッセルだけど羽毛のような軽い雪なので、ふたりでテンポよく交代しながらどんどん進む、どんどん登る。登り始めのときには極端に視界が悪かったけれど、徐々に明るくなってきた。

ただ、きょうは雪面が安定しない。とある斜面では僕が載った途端に上部から雪面が音もなく滑りはじめた。表層10〜15センチの軽い部分だからまだいいものの、それでも50m分をまともに受けたら全身が埋もれてしまうだろう。そこらへんにクラックが入りまくるのでちょっと不安になる。何度か小規模な表層雪崩を誘発する。ふたりでお互いの位置を確認しあいながら進む。万一埋もれたら相棒が救出に向かう。バディが同時に埋もれることのないようやや距離をあけ、同じ流路に立たないよう注意する。ザックのウェストとチェストのベルトを外し、ストックはリングを外して持ち、スキーの流れ止めも外した。万一埋もれることも覚悟してピリピリしながら通過する。通り終えたときはホッとした。

それにしても今日の雪の素晴らしさときたらどうだろう!軽い、深い、なめらかの3拍子が揃っている。間違いなく今季最高のコンディションだ。おまけにきょうの入山者は僕らだけで誰もいない。子持ち30男2名は子供のように歓声をあげながら雪まみれになる。深雪のなかテレマークスキーが浮かぶ。スキートップからはパウダーが放射状に巻き上がって全身を包み込む。楽しい!

AKロケットが喜んでいる。ゲレンデではイマイチの乗り心地なのに、深雪ではまるでヒトが変わったように爆発する奴。すげえよ!

興奮して何度も登り返しながらおいしい斜面を順番に滑っていく。ラストに僕が「パタゴニア」(カタログ写真のような斜面)と勝手に呼んでいる斜面を滑る。そのまま樹林帯に突入して滑り続けてフィニッシュ。ただ、ラストは下りなのにややラッセルしながらのゴールになった。

きょうはシーズン中に稀に見る絶好のコンディションだった。また富良野岳の入山者もきょうは2パーティだけだったらしい。急斜面ほど面白いという、きょうのような日だから、富良野岳もきっと最高だっただろう。

ただ、きょうは寒かった。相棒は耳たぶが真っ赤に膨れて福耳になってしまった。


2006年1月15日(日)

きょうの三段山 今年いちばんの快晴

天候:快晴
風速:微風
気温:0℃前後
雪量:130cm
雪質:高山帯ウィンドクラスト気味、樹林帯は深雪パウダー
新雪:40〜50cm
備考:ターンが難しいものの、浮遊感は抜群

〈十勝岳の噴火活動〉

おとなしい
 

美瑛も上富良野も、前夜から続いて暗い霧のなか。太陽は拝めない。薄暗いなかを、あまり期待せずにツアーは出発する。しかし演習場のあたりからまずオプタテシケが現われた。さらに中茶屋を通過する頃になると全山が一斉に姿をあらわした。どうやら平野には前日までの湿気が溜まっていたようで、分厚い雲のような霧を突き抜けると山上は完璧な快晴だったというわけだ。

それにしても、ものすごい空の青。この年末年始はお天気の日が続いたのだが、さすがにこのような完璧な青になったことはない。まさに春の眩しさ。旭岳や大雪山系は言うまでもなく暑寒別の山々、夕張山系、増毛山系と完璧な眺望が広がる。きょうは空気がとても澄んでいる。

森林限界を越えると風あたりのいいところでは雪の表面は固くなっている。いっぽうで風下にはクラスト気味に変化した新雪がたっぷり吹き溜まっている。とても深い雪だが、先日までのズブズブ感はなく、雪は締まりはじめている。深くてちょっと嫌な癖があるのであまりアグレシブな滑りはできないが、直滑降でも十分に楽しい。ひどいクラストではないから無理をしなければ失速や刺さりに苦しむこともない。深雪のなかで板がふんわり浮かぶ浮遊感を楽しむ。

樹林帯に入ると雪質がぐっと良くなった。あまりスピードはでないけれど、心配していた「深すぎて下りもラッセル?」状態ではない。雪がふわふわしているので、スキートップを軽くあげてやると、ふわ〜っと浮かび上がる。それが楽しくて、気がついたら白銀荘の裏の森のなかまで滑り着いていた。

先週は雪の日が多く、積雪量もかなり平年並みに近づいてきたと感じる。それでもようやく平年の年末くらいのレベルだろうか。せめて、あと1mほしいところだ。今週は雪の降る日が多いようなので期待したいところ。


2006年1月14日(土)

きょうの三段山 ふたたび美瑛岳山麓の原生林へ

天候:雪
風速:弱い南の風
気温:0℃前後
雪量:130cm
雪質:湿り気を帯びて、やや重い
新雪:40〜60cm
備考:滑りはまずまず

〈十勝岳の噴火活動〉

見えない
 

天気予報が外れた。くもりのち晴れの予報には、見事に裏切られた。

悩んだ末に白金温泉に向かう。きょうの天気では高山帯のルートはシビアだと思われた。いっぽうで原生林は悪天候に強い。それに、おとといのルートが生きてるはずだからラッセルが楽だと思った。

おとといのトレースの上にはさらに新雪が20センチほど積もっていたが、くるぶしくらいでラッセルというほどではない。雪には湿り気があり、少し重い感じがする。気温は高く、0度前後。小雨のような細かい雪が降り続いていて、ゴアテックスのジャケットに降りかかると水滴に変わってしまう。いつもならば整った結晶を見せるところなんだけど。

原生林を突っ切り、せっせと登る。まずは標高800m付近の登山道脇にある通称カバノアナタケスロープで第一陣を張るが、雪が深すぎてイマイチの滑りで終わってしまう。涸沢を渡って美瑛岳山麓のダケカバ台、続いてジャンプ台と続けて滑る。きょうは雪が深いので、やや急斜面くらいがいいかも。

アバレ川に近い森のなかでは白金温泉にある同業のガイドツアー屋さんのトレースを使わせてもらった。すでにスキーで踏んであるので、するすると気持ちよく滑っていく。いい感じの場所でアバレ川を渡り、あっという間にフィニッシュ。

きょうは森のなかを適当に登ったのだが、途中で標高をかせぎ過ぎたせいでオヤウシナイ沢を越えるのに苦戦した。複雑な地形をようやくクリアして対岸に至ったとき、そこにあった約100年生のトドマツの幹にびっしりヒグマの爪痕が刻まれているのを見つけた。白金温泉近くの遊歩道沿いにあり自然観光名所にもなっている「爪痕のトドマツ」よりもはるかに明瞭で荒々しい痕跡がびっしり刻まれている。ここが野生の森である証しだ。


2006年1月13日(金)

除雪作業

2日間降り続いた雪は夜の間に止んだようだ。今朝はまずまずの天気。

今年はじめて 、駐車場の除雪をはじめる。新雪が長靴の丈と同じくらい積もっている。駐車場だけで100坪くらいあるから手作業では追いつかず機械を使って除雪する。ロータリー除雪車の家庭用普及機をスノーラといい、北国ではごく当たり前に、たいていの家庭に1台あると思う。

今朝、そのスノーラが動かない。真っ青になった。

ジタバタしても仕方がないのでとりあえず、急遽、車の出入り分だけを手作業で除雪を行い朝の窮地を脱したが、 手作業で駐車場すべてを除雪したら、いったい何時間かかるのかと思うと日中も落ち着いてはいられなかった。もしかしたら一晩中かかるかもしれない。ひぇ〜〜・・・。

夕方、もう一度機械を点検する。クラッチやら方向陀やらをガチャガヤやってから、再びエンジン点火を試みる。スノーラはバイクとほとんど同じ仕組みになっていて、4ストの400ccエンジンが搭載されている。重量もパワーも400ccのバイクと同じくらい、燃料はもちろんガソリンだ。セルモーターで始動する。

ブルンブルン・・・ガガッガガー!ガガガガガ!

やった〜、おめでとう!

それにしても、機械に頼らなければ日常生活の基盤が揺るぎかねないとは・・・。わかってはいるが、北国の生活はやっぱり厳しい。

今年、日本列島各地から豪雪のニュースが聞かれる。特に苦労しているのはお年寄りだけど、他人事ではないのだ。自分たちの老後が重なって見える。


2006年1月12日(木)

きょうの三段山 美瑛岳山麓の原生林

天候:雪
風速:弱い西の風
気温:−5〜−8℃前後
雪量:1mくらい
雪質:パウダー
新雪:白金温泉付近35cm、標高800m付近60cm
備考:まだまだ降り続く

〈十勝岳の噴火活動〉

見えない
 

思ったとおり、ヘビィな幕開けになった。

まず、美瑛町。ガイドの山小屋の駐車場。そもそもドアが開かない。外に降り積もった雪のせいだ。そしてお客さんの車が駐車場に入るのを躊躇している。ど〜んと勢いをつけて入ってもらった。まあ、出るときはなんとかなるだろう。

あまりに雪が深いのできょうはツアー車の始動をあきらめ、僕のプライベートな車を使った。深雪も車の馬力で何とかなるだろう。

白金温泉からアバレ川沿いに入山する。もちろん過去のトレースは消滅している。雪のうえに立つとズブズブと埋もれるが、それでも脛くらいなので躊躇することなくエッサエッサと雪を漕ぎながら登はんを開始。ラッセルなら任せろ、現役の長距離チャリダーでんねん。これくらい朝飯前、屁のカッパ。

と、思いきや、標高750mを越えた途端に積雪がどっと増す。涸沢の登りに差し掛かると、ついにラッセルが膝を越えた。さすがに一人ではキツくなってきた。

美瑛富士分岐で昼食。雪は止む気配がない。どんどん降ってくる。

美瑛岳側に水平に移動してから、下り始める。雪が深くてスピードが乗らない。トップをひょいひょい挙げながら歩くような滑り方でひたすら下を目指す。

標高600m台になりアバレ川が近くなると、すっと積雪が減った。いつの間にか同業者が同じ森に入ったようで、僕の登りの足跡に加えて新しいトレースが重なっていた。彼らが山に入ろうとしたとき、アプローチの林道に伸びていく先行の僕らのトレースをみてきっと安堵したことと思う。こういうときはお互い様なのだ。次はきっと僕が彼らのトレースを一部使わせてもらうことになるから。

この週末、三段山や富良野岳は今シーズン最高のコンディションになること確実だ。特に富良野岳では、むせ返るようなオーバーヘッドパウダーが楽しめるだろう。ただ先行パーティが取り組むことになるラッセルはかなり厳しいこと疑いない。ガンバレ!

きょうは「エゾライチョウ」に2度出会う。2回目の遭遇では参加者と一緒に観察することができた。雪がしんしんと降る原生林では、雷鳥に出会う機会が多いように思う。


2006年1月11日(水)

待望の雪が降る

きょう今年はじめて、ついに天気予報が当たった。

おめでとう!

美瑛では朝から雪がシンシンと降り続いている。夜の間に10センチくらいは積もっただろうか。夜が明けてもさらに降り続いている。深々と音もなく降り続く雪は、どんどん積もる雪だ。待望の雪。

日中も雪は、降ったり止んだりを繰り返しながら確実に積雪を増していく。この ぶんだと雪不足の分をかなり取り戻すのではないかと思われる。

明日もこのまま雪が降り続くという。明日のツアーは久々のラッセルになりそうだ。

さて、明日はどこに行こうか。ど〜んと、手ごたえのあるラッセルに挑もうではないか。

山にはやっぱり、雪がたくさん積もってほしい。これでもう大丈夫だろう。

週末はお天気になりそうだという。今週末の三段山、富良野岳方面は素晴らしいコンディションになるに違いない。久々の本物の深雪だ。


2006年1月10日(火)

きょうの三段山 扇沼山、三山台トムラウシ方面

天候:晴れ
風速:無風
気温:−3〜−5℃
雪量:1mくらい
雪質:パウダー
新雪:10センチくらい
備考:うららか

〈十勝岳の噴火活動〉

いつものように元気
 

またまたきょうも快晴。なんという冬だろう。

この山域には入山者がほとんどいないようで、アプローチの林道にも動物以外の足跡がない。正月のツアーのトレースが薄っすら残っているが、その上には10センチほどの新雪が乗っている。新雪をさらさらと巻き上げながら歩く。

しばらく林道を詰める。青空がまぶしい。きょうは暖かなのでフリース1枚でも寒くない。まるで春スキーのような気楽な森歩き。やがて稜線への登りに取り付いて一行は明るい森を順調に登っていく。遠くでキツツキが木を突くドラミングが聞こえてくる。野生の森だ。

昼過ぎ、小ピークに到着。十勝連峰オプタテシケそしてコスマヌプリからトムラウシ本峰への峰々の連なりが見事だ。厳冬の冬山はほんとうに美しいと思う。きらきら輝いている。

昼食後はルートをかえて滑りを楽しむ。広くてなだらかな林間の斜面をするすると滑っていく。豪快な下りではないからこのあたりは三段山や富良野岳のようなメジャーな山スキーの対象にはならない。ただ、一部のクールなフロンティアーズがやってくることはあるようだ。U田塾長もずっと以前にトムラウシ方面へ遠征の際にこのあたりを通ったことがあるという。さすがだ。

しかし、地味な山域なのであまり一般受けすることはないと思う。おかげで自然そのままの雪山が楽しめる。おまけにこのロケーションはどうだろう?ここは僕のお気に入り、イチオシだ。

このコースで下見とツアーを数度繰り返したおかげで、きょう、ゴールまで誤差なしに森を通り抜けてフィニッシュすることができた。これができるようになったならもう地図もコンパスもいらない。

もし、下りのルートを間違えたなら後戻りできない渓谷へとズルズルと落ちていくか、あるいは底なしの樹海へと迷い込むことは必至なので、コースミスは許されない。でも、もう大丈夫。・・・だと思う。

このコースでは、もう少し「滑り」を楽しめる場所が欲しいというリクエストをいただいた。これからの課題にしたいと思う。


売ります (委託販売)

K2 シーズピステ 174cm

ビンディング(写真のとおり) モヘアシール付 

使用履歴 ゲレンデ2週間 バックカントリー7日

希望販売価格:3万円 落札 ありがとうございました。

107/70/97mm 重量1500g、女性でも楽に取り回すことができることをコンセプトに開発された板で、とても柔らかくカーブ性能に非常に優れます。男女を問わず入門用に最適かと思います。モノの状態は5段階の4クラス、所有者は親しい知人です。身長170センチ前後の方に良いと思います。まともに買えば6〜7万円くらいです。問い合わせはまず、ガイドの山小屋にメールしてください。所有者に転送します。問い合わせのメール


2006年1月9日(月)

クラシック・スタイル

またしても天気予報外れる。 雪の予報だったのに、晴れている。こうなったらず〜っと晴れていなさい。

道路はアスファルトが現われて春のよう。積雪は、12月の中旬以来、ほとんど増えていない。むしろ減っている。ただ、気温は例年になく低いので、雪が融けたわけではない。氷のように固く締まった雪で山野は覆われている。

きょうはみんなで里山を滑る。気温が低くて雪が締まっているので、丘陵地はまるでゲレンデのようだ。みんな思い思いの場所で滑りまくっている。きょうは細いクロスカントリースキーなので、テレマーカーな人たちもうまく滑れずに苦労している。それがまた面白くていい。

やっぱり里山には、クロスカントリースキーがいいと思う。

僕はきょう、近くに住む知人からもらった皮締め具のクラシックなスキーを初めて履いてみた。里山にはピッタリだと思ったのだ。

この皮締め具のスキー、いわゆる昔のスキーなのだけど、原理はテレマークスキーと同じ。違いはというと、ケーブルとスプリングのビンディングではなく、皮のベルトで縛っている点だ。踵は固定されないので、スタイルはテレマークスキーと同じ。でも、かなりグラグラする。不安定だ。ブーツも革靴なので、なおさらだ。

でも、かねがねテレマークターンが出来るはずだと思っていたので挑戦してみる。ところが思った以上に手強い。足元は3ピン以上に、安定しない。

2度目の滑降で派手に転んだ。ああ、難しい・・・。

あきらめてアルペンスタイルで滑ってみる。これなら何とか滑れる。テレマークと原理が同じだからといって、テレマークターンができるわけではないらしいと、ようやく知ることになった。

ツアー終了後は皆で美瑛町五陵にあるリーズカフェでランチをいただく。手作りのロッジふうのこのお店、特に冬は雰囲気がなんともいえず、いい。チキンカレーが格別においしい。

薪ストーブの香りがする。これがまたクラシックでいい。このお店、皮締め具の古風なスキーにとてもよく似合っていると思った。

残念ながらオーナーでテレマークスキーインストラクターのKさんは不在で楽しいお話が聞けなかったが、それでもみんな満足げだ。

きょうは連休の最終日。これからみんなは午後の飛行機でそれぞれの仕事場に帰っていく。休日の最後に、とてもいい時間を過ごさせてもらえたと思う。


2006年1月8日(日)

きょうの三段山 的中率0%、天気予報はなぜ外れるのか?

天候:晴れ
風速:西の風
気温:−10〜−15℃
雪量:1mくらい
雪質:パウダー
新雪:5センチくらい
備考:ともかく寒い

〈十勝岳の噴火活動〉

いつものように元気
 

今朝も眩しい朝日で目覚める。またしても天気予報が外れた。きょうも快晴。

昨日、三段山では積雪があった。ツアーが終了して温泉に入って帰るころ、結構勢いのある雪が降っていた。このまま降り続いてくれたらいいのにと思っていたのだが、昨夜の雪は早々にあがったらしい。それでも新雪が薄っすら積もっている。そこそこ、いいカンジ。

昨日に続いてバーンの状態はいい。昨夜の新雪のおかげで弧を描くようにスプレーがあがる。朝一番の圧雪が入る前のゲレンデを想像してもらったらいいだろう。全山(正面の一般登山道を除く)がそんな感じだった。

ボード&テレマーカーで構成される「チャレンジコース」はU塾長を先頭にそこらへんのパウダーを片っ端から滑りまくっている。僕が引率する一般コースは滑らかな緩斜面を選んで、それぞれが晴天のバックカントリーを満喫する。

それにしても寒い。昼すぎには無線の電池(パナソニックのアルカリ)がダウン。続いて塾長の撮影機材もダウンしたという。こんな寒いツアーはなかなかない。いっぽうauの防水携帯電話はむき出しにも関わらず何事もなかった。最近の携帯電話のバッテリーはさすがだ。

それにしても毎日好天が続く。積雪は、バックカントリーを楽しむには差し支えはないが、前に進めないほどの深雪が常というこの山域の面影は、今年はない。平年の道東の山のような感じで、ラッセルが全然ない。

でも、このまま冬が終わるはずはないのだ。毎年、降雪量は最終的にはバランスがとれることになっている。ということは、いずれドカッとくるはずだ。

それはそれで、怖い。まんべんなく降ってくれたらいいのに。


2006年1月7日(土)

きょうの三段山 結構イケてるゲレンデ状態

天候:晴れ時々くもり
風速:西の風やや強く
気温:−10〜−15℃ 感覚ではなく、ちゃんと計測したデータ
雪量:1mくらい
雪質:ガッシリした下地のうえに数センチのシャキシャキ雪
新雪:3センチくらい
備考:本気で寒い

〈十勝岳の噴火活動〉

かなり元気
 

やっぱり天気予報外れる。 くもり時々雪ところにより吹雪くはずが、この天気。今年に入って予報的中率は0%だ。しかも、良いほうに外れている。その、当てにならない天気予報のネガティブ予報のせいか入山者はきょうも少ない。いつもは混雑しているバーデン前にも車は1台しか停まっていない。

新雪がほとんど降らないせいか下地は頑強でツボ足でも歩けるほどになっている。その上に乾いたシャキシャキ雪が数センチのっている。なかなかいいカンジだ。まず登りやすいし、おまけに癖がないので滑りやすい。

きょうのツアーには初心者が2名含まれていたが、午前中にはテレマークスキーにすっかり慣れたようで、中盤以降のツアーはハイペースで進む。癖のない雪のおかげで皆、とても調子がいい。ベテラン勢は後ろのほうで好き勝手にそこらへんのパウダーを蹴散らしているし、初心者勢も振り返るともうそこにいる。急き立てられるようにどんどん滑る。じゃんじゃん滑る。

それにしてもきょうは寒い。尾根を越えたときは寒くて寒くて休憩もそこそこに退散する始末だ。2段目以降になってようやく寒さから開放された次第。僕にしては珍しく、きょうはインナー帽にヘルメット、そしてゴーグルを着用した。それでもやっぱり寒い。

前十勝方面の林間から白銀荘にゴールイン、と思いきや、なぜか手前の森のなか谷あいの地形に1台の車が横転して谷にすっぽりハマっている。よくみると凌雲閣の雪上車ではないか。

どうやら林内をブイブイいわせているうちに、やっちまったらしい。

みんなを温泉に送り届けてから凌雲閣の若旦那たち救出班に加勢するが、僕がほとんど何もしないうちに雪上車は自力で雪のなかから這い出してきた。すごいパワー。見かけは博物館級のクラシックカーだというのに。

それにしても、ふだんはあまり話す機会のない凌雲閣の社長とたくさん話ができたことが楽しかった。こんな機会はなかなかない。

社長曰く、「また外出禁止になってしまう・・・」と、少々困惑気味ではあったが。

やんちゃが好きな社長である。


2006年1月6日(金)

会話のリズム 

きょうは外国からのお客さんが参加した。ノー日本語? はいはいノー問題です!スピークインッグリッシュやねんからと気軽に出発したものの、頭のなかは日本語と英語がごっちゃになって、ややこしい。

1ヶ月前にはペラペラと話していた僕、しかしながら口がうまく動かない。日常生活が必死の瀬戸際英語からべったり安心の日本語生活に戻ったせいだろうけど、なんというか、リズムが乗 ってこない。英語は話し出すと特に意識をしていなくても自然に口から出てくるものだという。 そう言われてみると、僕のような初級スピーカーですら、慣れると考えながら話すことはないように思う。頭のなかにある単語だけで適当に口にするわけだが、今日はそもそもそれがうまくいかない。あれ、何だっけ?という具合にいちいち言葉に詰まる自分がもどかしくてしょうがない。イライライラ・・・

それでもツアーは何とかなるもので、ガイジンさんも大満足だったんだけど、成功のカギは僕ではなく1月にしては珍しい上々のお天気様様だったように思う。きょうは他力本願で何とかなったというカンジで、僕はすっきりしない。

調子が悪いときは日本語のトークすらうまく噛み合わないことがある。ノリが悪い日は誰にでもあることだろうけど、毎回のツアーが成功して当たり前のプロガイドにとって、「きょうは調子が悪い」なんていう言い訳はただの甘えに過ぎない。まだまだ修行が足りない 僕。

数ヶ国語を流暢に使い分ける人は語学力云々はもちろんのこと、思考がめちゃめちゃ柔軟なんだと思う。その柔軟さが僕には足りない。英語、日本語、関西弁。絶妙のリズムに乗ってときどきギャグをかましながらガイドトークをこなせるようになると、きっと楽しいだろうなあと思うのだが。

きょうは野生のキツネが雪原を疾走しているのをみんなで見ることができた。


2006年1月5日(木)

休日 

きょうは快晴。なんだか、すんごい天気。家のなかにいてもサングラスがほしいくらい。妻は紫外線を気にしてかカーテンを閉めまくって家のなかを逃げ回っている。

快晴なのに、きょうは休み。もったいないなあと思いつつも、年末年始とずっと無休で突っ走ってきたので出かける気にはなれず、寝て過ごした。

ああああ、もったいない・・・・。


2006年1月3日(火)

きょうの三段山 わくわく悪雪まつり 

天候:晴れ時々くもり
風速:南東の風
気温:0℃前後
雪量:1mくらい
雪質:もっさりした風成雪
新雪:風で移動してきた雪10〜20センチ
備考:ところどころでモナカ形成

〈十勝岳の噴火活動〉

水蒸気の量多い 白い噴煙がモクモク
 

またしても天気予報が外れる。ここ1週間ほど、予報は100%外れているからもうアテにはならない。ちなみにきょうは吹雪のはずなのだが、この青空はいったい何なんだろう?

昨日の午後から山は強風によって荒れた。樹林帯より上では積雪は飛ばされて谷を埋め、樹林帯のうえに降り積もった。空から降る軽い雪ではなく風によって飛ばされてきた雪だから粒子が密でもっさりした印象。ちょっとパウダーとは呼べないシロモノだ。足元をすくわれるため、ターンが極めて難しい。

それでも、お天気がヤル気を引き起こさせる。きょうツアーに参加しているテレマーカー「Kさん」がやってくるときは極めて晴天率が高いのだが、今回もその伝説は健在だ。吹雪を覆す力。Kさんは神か?快晴の日に当たりたい人はKさんの動向が要チェックだ。ちなみにKさん、彼女は何度もガイドの山小屋のWebや年賀状やパンフで表紙を飾っている。この事実が彼女のズバ抜けた晴天率の高さを物語っている。

前述のようにパウダーの質はもうひとつなのだが、滑りはいい。みんな 果敢にチャレンジする。もちろん直滑降だ。派手にドドーッと下り、その派手さを競う。テクニシャンはそれでもターンに挑戦しようとするから派手に転ぶ。これがまたいい。僕もガイドUも派手に転んで雪まみれになる。

わくわく悪雪まつり。転んで楽しい雪まみれの1日、こういうやんちゃな三段山もまたいい。


2006年1月2日(月)

きょうの三段山 離れたところからみた十勝連峰 

天候:くもり時々晴れ のち急変して地吹雪
風速:東の強風
気温:0℃前後
雪量:1mくらい
雪質:まるっとした雪
新雪:10〜20センチ
備考:扇沼山、硫黄沼、三山台トムラウシ方面へのアプローチ

〈十勝岳の噴火活動〉

激しい東風によって噴煙が斜面を下る様子が遠望された
 

いかにも「これから荒れるよっ!」っちゅうカンジの午前。嵐が先か僕らが先か、競争だ。昼までは比較的穏やかで樹林帯のアプローチを歩いている間も気持ちよい森歩きを堪能できた。きょうはやたらとカバノアナタケが見つかる。最近は滅多に見られなくなったというが、あるところにはあるものだ。

いつもはそのどこかの斜面に張り付いている十勝連峰をきょうは遠望する。ほんとうにカッコイイ山々だなあと思う。山上はすでに道東へむけて北上しながら発達中の低気圧の影響をうけていて、いかにもヤバそうな雲がかかりはじめているが、そういう様子もこうして正面から見据えると、とてもダイナミックでかっこいい。いまにも山を飲み込まんとする巨大な津波のようだ。

トムラウシ山へと続く古い登山道のある稜線で昼食をとる。オプタテシケが目の前にあるはずなのだが、すでにオプタテシケは巨大津波のような雲に包まれていて、生々しい迫力があった。

やがて稜線にいる僕らの付近でもにわかに突風が吹き始める。エゾマツの木に積もった雪の塊が落下して地響を伴ったものすごい雪煙があがりはじめる。まるで無差別爆撃だ。眼下に広がる樹海でも「爆撃」は始まっているようで、森の中のあちこちでものすごい雪煙があがっている。いよいよやばい天気になりそうだ。

大急ぎで下山するが、除雪されていない道路の法面をみてガイドのUが「いやいやいや・・・遊びましょう!」とわめくので仕方なく皆で付き合ったが、たちまち皆、法面すべりの虜になる。雪まみれ、無我夢中のチャレンジャーだ。

みんな子供に帰ったかのようだ。ただ、さすがに雪崩防止柵の上からのハイジャンプに付き合う者はいなかったけど。


2006年1月1日(日)

きょうの三段山 予想外の羽毛パウダーに興奮 

天候:くもりのち晴れ
風速:微風
気温:-5℃前後
雪量:1mくらい
雪質:羽毛パウダー
新雪:20センチくらい
備考:入山者が少ない

〈十勝岳の噴火活動〉

いつものように元気
 

天気予報はくもりだったのだけど、昼前から急速に晴れだす。雲の切れ間から日光が差し込み、富良野岳の山頂が顔を出す。初日の出にふさわしい演出がにくい。

昨日までは雪がほとんど降らず、どの斜面もすでにガタガタで特に上のほうはけっこう危ない状態だったのだが、その昨日までの固い雪を下地にして夜の間に静かに降り積もった新雪が約20センチ。羽毛のように軽く、掌にのせてフッと吹いてやると風のように消えてしまう。そんな雪だった。

昨夜、平野ではほとんど雪は積もらなかった。美瑛町も上富良野町も1〜2センチがせいぜい。だから山に新雪が積もったことなんて全然期待していなかったんだけど、これがうれしい誤算になった。どの斜面も一気にリセットされて、パウダーが満開だ。

それにしても正月だというのに入山者が少ない。こんなにいい状態なのに、なんてもったいない。

珍しく富良野岳の駐車場にも車はまばらだった。稜雲閣にも午前10時現在、車はガイドの山小屋のツアー車2台だけだった。三段の入山者も10組いなかったのではないだろうか。

さすがに明日は混むと思うので混雑をさけてトムラウシ方面に行こうと思う。


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