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2004年7月21日

 

北海道の梅雨

 

  北国も雨の季節になりました。本州が梅雨明けするこの頃になると梅雨のない北海道にも短いながら雨の季節が訪れます。ちょうどこの季節は麦秋(麦の刈入れの季節)なのですが、毎年、収穫間近の麦が雨で倒れてしまった、とか、水に浸かってしまったという話をよく聞きます。麦の穂が倒れてしまった麦畑は僕のような素人目にみてもなんだか痛々しいものです。まあ、見た目ほど深刻というわけではないそうなのですが。

 さて、今年も麦秋がやってきました。2昼夜続いた雨も今朝になってようやくあがり、いま美瑛の丘ではあちこちで見事な黄金色に染まった麦畑が見られます。しかしながら今の季節は晴れ間は3日と続かないので、抜けるような青空の下に広がる麦秋風景に出会える人は、とても幸運な方といえるでしょう。

 今朝も何人かのお客さんが早速、電動自転車で美瑛の丘へ向かって出発されました。天気は晴れ、気温24度、乾いたサラサラの風が丘をこえて吹いてきます。僕のお店のあたりも緑の風の香りに包まれています。これはきっと気持ちのいい1日になることでしょう。

 

2004年7月18日

 

自転車はつらいよ

 

  レンタサイクル業務をしていて必ず聞かれることは

 「坂は多いですか?」

 はい、めちゃめちゃ多いですよ。自転車で回るのはかなり辛いです。と、正直に答えたいところ。しかしながら、これから自転車で観光しようとしている方にそんなこと言えるはずもありません。結局、

 「そうですね、まあ、そこそこに・・・」などと言ってあいまいな笑顔を添えてお茶を濁すことになります。こころ苦しいのですが。

 ガイドの山小屋を始めてしばらく、何年かは貸し出しの車種は自転車(ママチャリ)とMTB(マウンテンバイク)の2種類だけでした。ママチャリは安い、レンタル料1時間200円という安さです。お店側 にとってもママチャリはタイヤに空気をいれてブレーキのチェックだけすればよく、整備はほとんど不要、操作方法の説明も不要、しかも1台1万円台と購入価格が安く、 寿命も10年。 さらには、たった半月で車両購入費の元がとれてしまうのです。あとは儲かるのみ。つまりママチャリはとても利益率のよい商品です。とても楽な商売といえます。粗利率90%以上、これは儲かります。ところが・・・。

 丘めぐりにママチャリは大変、酷なんですねこれが。辛すぎます…。

あまり具体的な例を挙げるのは遠慮しますが、まあ当然といえば当然なんです。美瑛は京都や金沢、萩・津和野とはわけがちがいます。北海道なんです。まず広いし、それに「丘めぐり」ってことはいくつもの山を越えるというわけなんですから。

 

 疲労困憊して帰ってくる人たち。表情に怒りが込み上げている人、泣きそうな人、不満をぶつけてくる人、ともかく当たり散らす人、体調を崩す人・・・。散々な目に遭った人たち。ママチャリを借りた人にしてみれば、 間違いなく後悔しているようでした。安い商品であることを差し引いても商品を提供する側にも問題があるような気がしました。 こちらに過失があるわけではありませんが、あからさまに「2度と来ない!」という態度をとられるのは辛いものです。僕は悩みました・・・。

 僕個人の意見としてはマウンテンバイクがいちばんお奨めです。しかしながらスポーツ自転車特有の「前傾姿勢」や「固いシート」は女性を中心に苦手だという方 も多いんですね。乗り慣れないと、なかなか「快適」とはいかないものです。またカゴがないことに不便を感じる方も多いようです。 ママチャリとマウンテンバイクのたった2車種では、お客さんの選択の幅が狭すぎることは明らかでした。

 そこで、思い切って3年前から電動自転車の導入をはじめました。バッテリー容量が比較的大きい業務用の電動アシスト自転車は予備バッテリーを含めると10万円を超えてしまい経営効率を考えるとあまり上手な選択ではないことは明らかでした。 難しい選択でした。なにしろコストはママチャリの10倍、しかし、レンタル料10倍というわけにはいかないのですから。整備の手間もかかり、車両の消耗も激しく寿命はせいぜい5年 、さらにバッテリーは2年しか使えず、しかも4万円近くします。しかもお客さんの中には使い方が乱暴な人も・・・。

 しかしながら、振り返ってみるとこの導入は成功したように思います。1時間600円、1日3000円という少しばかり高めのレンタル料にもかかわらず、その後多くの方が電動自転車を選択するようになりました。しかも、ほとんどの方は笑顔で戻ってくるのです。また来ます!という声 が多く聞かれるようになりました。実際に、電動自転車を借りたお客さんの多くが翌年もまた美瑛を訪れてくれます。これは僕らにとってなにより嬉しいことです。予想をはるかに超える、上々の反響でした。

 最近では元気そうに見える方にはマウンテンバイクを、女性や荷物のある方には、押し売りにならない程度に それとなく電動自転車を薦めるようにしています。ママチャリはあまりおすすめしません、と、正直に言うことにしています。ママチャリを選択する方は今でも勿論いらっしゃいます。 安さが優先の学生などの旅行者のためにも、ママチャリはやっぱり必要です。

 トラブルもめっきり減りました。事前に説明を受けていることもあってママチャリ客からの苦言を受けることも少なくなりました。それに対してリピーター利用が増えました。 このことから僕は「合理性」だけではなく「品質」を優先するべきということを覚えました。そう、旅行者はここまで来るためにすでに何万円も投資している わけですから旅の目的を台無しにするような安易な選択ミスはしない。そのことに鈍い僕はなかなか気付かなかったんですね。安いが一番!安さこそお客さんにいちばん喜ばれるんだと、つい 最近まで信じて疑わず、今頃になってようやく、「どうやらそうともいえないみたいだ」と、気づいたわけです。結局のところ貧乏旅行の頃の性根が抜けていなかったということなんでしょうね。

 それに、移住して美瑛町の住民になってからというもの、いつの間にか旅人の立場や目線の高さで物事を見ることを忘れてしまっていたのかもしれません。

 また、電動自転車のレンタルをはじめてから、これまで予想したことのない大きな変化があります。車で来店される方が目立って増えてきたのです。丘をめぐる手段としてやむを得ず安価な自転車を選択するのではなく、より気持ちよく回るために自転車を選ぶ人が増えたのでしょうか。風に吹かれながら気持ちよく。。。きっと電動アシスト自転車は これにぴったりの、素朴でかつ新しいアイテムなのでしょう。また、これらの人たちは旅慣れていて目が肥えているという印象も受けます。 遊び方が素朴なのにスマートで上手。あ〜なるほど! こういうニーズがあるのかと僕も教えられました。

 車は便利ですね。なんたって天気の心配をしなくていい。一方で車のなかはイマイチ退屈で、ときめきが少ないんですよね。車内は密室ですし車窓風景は臨場感に乏しい。僕自身、日本列島自転車の旅からバイク旅へ、さらには車で旅行するようになってから、心から風景にジンと感動する機会が減ってしまったような気がします。それは気のせいではないと思っています。

 また、独身のころの僕は車でのデートが苦手でした。しばらくドライブを続けているうちに緊張が張り詰めたような密室に気が滅入ってしまい、会話を続けるのが億劫になったりイライラしたり。 次はどこへ行くか、その次は?いつの間にか移動のことばかり考えているうちになんだか疲れてしまうのです。そんなとき、そこにレンタサイクル店があったなら、僕は躊躇することなく車をとめて外に出て、海辺の道を彼女と一緒に走りたいです。で、堤防のうえに登って海を眺めながらオニギリを食べるんですよ 、水筒にいれた冷たい麦茶を飲みながら。う〜ん、小洒落たレストランよりも絶対いい!それが美瑛の丘であっても、きっと素敵でしょうね。あ〜〜もっと早くに気が付くべきだった!

 よく晴れた気持ちのいい日には、やっぱり自転車はいいですよね。

 

 先日、ある新婚さんが結婚の報告を兼ねて訪ねてきてくれました。2人はガイドの山小屋で出会い、自転車で一緒に美瑛の丘をまわり、その後も交際を続けて先日ついに結婚したそうです。なんだかとっても嬉しいですね。 素朴な乗り物、自転車は、ふたりの距離も縮めてくれるのかもしれません。

 

2004年7月6日

 

僕の好きな風景

  今から16年前に初めて北海道に旅行にきたとき、偶然この場所を訪れたことをよく覚えています。その当時このあたりは一面の小麦畑でした。中央の白樺の木の下にはボンネット型の古い小型トラックが朽ち果てていて、なんだかウィスキー「ジャックダニエル」の宣伝用ポスターみたいな風景だなと思ったものです。そして今年もまた、ここは小麦畑になっていました。

 ここからは広い空を背景にして、僕が愛してやまない十勝連峰がよく見えます。できることなら、いつかこの場所に土地を買い、小さな家を建てて住みたいな、などと楽しい空想をしてみたりするのには絶好の場所です。車では入れない、決して人に教えない場所なのですが、誰にでもそういう場所があっていいものですね。小麦が色づくころ、また歩いてみようと思っています。

 昨日、少人数を連れて丘を歩くガイドツアーで野生のスズランを探して歩くうちに思わずこの場所を通りがかることになり、ふと16年前のことを懐かしく思い出したのです。確か16年前もまた昨日と同じような空気の澄んだ気持ちのいいお天気だったような気がします。

 丘の脇のちいさな森のなかで白樺の幹にまとわり付いて枝を伸ばす山葡萄の木には、早くも固い緑色の果実がたくさんぶらさがっていました。酸っぱい紫色の果実が熟すのはまだ4ヶ月近くも先のことだけど・・・。今年も、豊作になるといいなぁ。

 

2004年7月4日(日)

 

タモギタケ

 左のキノコはガイドの山小屋の敷地内に転がっている丸太や切り株に勝手に生えています。食用になるおいしいキノコで、ヤチダモという木の倒木に発生し 、一般にはタモギタケと呼ばれスーパーなどでも売られています。北海道ではなじみの深いキノコといえます。売られているタモギタケは栽培もので 、花びらのような黄色い薄い肉で「黄色い舞茸」のような印象ですが、天然物はごらんのようになかなか立派なものです。バター炒めや味噌汁の具、炊き込みご飯などに利用します。森の香りの味がする、とてもおいしいキノコです。他にも敷地内にはセリやウドなどがごく普通に生えています。

 初夏はとてもさわやかな季節なのですが、僕の初夏はというと修学旅行や団体の引率の仕事、外国からの旅行者の案内業務など、なかなか多忙で買い物もままなりません。こんなとき、息抜きをかねて夕方に庭を歩いてみれば、晩御飯のおかずが生えていたりするわけです。いや、ほんとうですよ。

 

 

2004年5月13日(木)

 

北国の春

  大型連休が過ぎたこの時期はとても静かで美しい季節です。 道端を野の草花が彩り、あちこちの野原はエンゴサクやエンレイソウなどの野の花に染められ、エゾヤマザクラが薄いピンクの花びらを開きはじめました。

 この時期に美瑛を訪れることができる人はほんとうに幸せだなと思います。大型連休が終わったばかりで大方の方は休暇など取れる時期ではないのでしょうね。訪れるのは外国の方ばかり、ちらほらと・・・。ほんとうに美しい季節なのですが、この美しさを楽しめるのはほんの一部の方だけのようです。

 この日誌を書いている今現在も、うちの裏庭(というか原野)では、野良仕事着に身を包んだ知らないおばさんが鎌を片手に勝手に入ってきて山菜を探しています。フキやウドなんかを勝手に取っていくんですね。ほのぼのした光景です。いや、ほんとうは「私有地だぞ〜」って抗議しなきゃいけないんでしょうが、不思議と何の反感も抱かないものです。どうやら僕にも北海道的な大らかさが芽生えてきたのかもしれません。いや、ほんとはちょっと気になるんですけどね。ギョウジャニンニクを採らないで!とヒヤヒヤしてます。

 ようやくシラカバが小さな若葉色の芽をつけ始めました。風に揺れています。現在の気温は18度、快晴。1年でいちばんさわやかな季節です。

 僕は毎年この時期は仕事も暇なので本をたくさん読むことにしています。おっと、こうしている間にクロネコヤマトのトラックが入ってきました。山菜のおばさんはいつの間にか姿が見えなくなっています。え〜、たった今、通販のブックサービスで注文していた本を受け取りました。全部で9冊です。若草の香りがする風を楽しみながらウッドデッキで本を読むのはなかなかいいものです。みなさんも本を片手に美瑛にお越しになりませんか?そういう休日もいいものですよ。


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