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2004年1月31日(土) くもり時々晴れ

(2月1日 一部加筆して再掲載)

 

苦渋の決断 −遭難のリスクとの狭間で−

 きょうのツアーはツアー半ばで引き返すことになりました。

毎日やっていれば、そういう日だってあります。

 きょうの参加者は女性3名。もし、そのままツアーを続行すれば終了は日没 は必至という状況でした。最悪の場合は山中で夜を明かす可能性も考えられました。万一にも疲労困憊したお客さんを連れてビバーク(緊急露営)するときは最悪の結果もあり得るという覚悟が必要です。しかも、連れているのは冬山には縁のない、ごく普通の女性たちです。さ〜て、ここは引き返すべきか?続行するべきか?もし中断ということになれば、原因になった彼女のプライドを大きく傷つけるのではないか。これが一番心配でした。散々に待たされたほうの人たちはというと、こちらはまあ、何とかなりますから実はあまり心配してなかったのですが。

 僕は悩みました。タイムリミットのギリギリまで粘りました。 彼女はほんのささやかなコツを見出すことができずにもがき苦しみ、スキーに登はんシールを張っても登ることができずにいます。 あきらめてスキーを外してみても、すでに疲労が進んで雪の上を歩くことにも困難を極めています。でも、滑ることには問題ないかもしれない。 そう考え、ともかく諦めずに粘りました。・・・いや、やはりダメみたい。・・・いやいや、しかし滑りに難があっても、転んでもすぐに起き上がることができる方なら何とかなるかもしれない。 何しろ彼女は夏山トレッキングの常連さん。体力はあるんだから・・・。いや、それもダメか・・・。

 現在地は標高1400mの稜線上を少し下った緩斜面。ここから冷静に、これまでの移動距離と所要時間から下山予定時刻を割り出してみます。予想される到着は6時間後の午後7時、いや、9時か。しかし、ここに疲労という要因が加われば、 あとはもう運と、みんなの体力と精神力の頑張りに任せるしかないと思われました。遭難のリスクが現実のものとなって目前に迫ります。なにをおいても安全が優先される。幸い、まだ陽は高い。ここで合理的に考えるならばさっさと引き返してしまうのが得策にきまってる。いや、でも、ともかくギリギリまで待ってみよう。このままあっさりツアーをやめてしまったら、 彼女だけではなく他の参加者の不満も抑えられないだろう。彼女たちが次に冬の北海道に来られるのはいつになるだろう?僕が預かった貴重な休日、台無しにはできない。それに、ここでやめたら今 、苦労しながら全力で頑張ろうとしている彼女の立場がないじゃないか。なんとかその頑張りが笑顔に変わらないだろうか。頼む、立ち上がってくれ。もう少し、もう少し・・・。 もはや焦りを隠せなくなり始めた僕は、なかなか動かない彼女に声をかけ続けます

「頑張れ!でも、ちょっとだけ、急いでくれるかな!」

 結局、僕が現場で下した答えは、やはり引き返すことでした。 彼女のプライドが大きく傷ついたことは想像に難くありません。本当に申し訳ないことをしました。僕自身もガイドとしての完全敗北を喫する結果となりました。こういう場合は、本当に辛いものです。僕たちをあざ笑うかのように広がる青空と、いつになくダイナミックな十勝岳の噴煙がこのときばかりは恨めしく思いました。

 楽しくて当たり前のアウトドア。それなのに、大切なお客さんに不快な思いをさせた・・・。 確かに言い訳はいくらでもあります。でも、

「それを何とかするのが僕の仕事」

これからも大きな課題が残されました。誰にでも本物の冬の十勝連峰を見せてあげたい。ここはほんとうに素敵なところだから。そう考えて始めた十勝連峰のバックカントリースキーガイドです。でも、現実はそう甘くはないのです。年々使用する道具が良くなり、以前よりもツアーはラクで楽しくなりました。でも、僕はどこかで道具を過信していたかもしれません。過信していたからこそ、何とかなるだろうと思ってしまったのでしょう。しかしながら、進化した道具で全ての人が救われるわけではないのです。やはりスキーも自転車と同じで微妙なコツというのがあります。いったん得とくすれば生涯忘れないコツ。でも、それは100%全ての人が持っているわけではない。いくら道具が進んでも、そこをカバーすることはできないから。

 大変だった今回のようなケースの場合でも、彼女は平地でのクロスカントリースキーなどで練習と経験を積めばいつか参加は可能になると思います。ただ、少し他の人よりも若干時間がかかるだけ。慌てなくてもいいんです。山も雪も決して逃げないからね。

 何はともあれ、きょうも無事に冬山から還ることができたことは、やはり幸せだと思っています。もしかしたら、今この時間に、「がんばれ、がんばれ」と疲労困憊で意識が朦朧としはじめた 彼女たち参加者に対して励ましの声をかけ続ける自分が、夜の闇に包まれた冬山の奥深くに、いたかもしれないのです。

 外の気温は、今夜も氷点下10度を下回ろうとしています。

 

2004年1月30日(金) くもり時々晴れ

 

雪山における男と女

 と、書けば何やらあやしい話題になりそうな気配が漂いますが、いやいやそういう方向ではありません。念のため。

 ガイドの山小屋には場所柄、女性のお客さんが多くいらっしゃいます。冬でも利用者は6:4の割合で女性が優位でしょう。きょうのツアー参加者も7名中5名が女性でした。そして週末が始まる明日以降も女性の人数が多くなるのではないかと思います。毎日お客さんと接していて漠然と感じるのは、女性のほうが男性よりもはるかに楽しむことに対してポジティブで貪欲ではないかということです。ガイドの山小屋のツアーはそんな女性たちが先行して引っ張っているのです。

 では、男性はどうかというと、う〜ん、疲れているのかなぁ。あまり積極的ではないです。時には、何を言っても男性参加者全員が無反応なんて日もあります。つまり、シーンとしている。無口を通り越して完全な無反応です。そんなとき、一緒に参加している女性たちの顔色に微妙な反応が浮かぶのを僕は決して見逃しません。

「この人たちとはちょっと距離をおいたほうがいいかも…。」そんな反応。長くガイドをやってるとそういう空気が読めてきます。

 僕の仕事のなかでも結構大切なことのひとつに「雰囲気づくり」があります。つまり、みんなのポテンシャルを出来る限り引き上げてやる役目です。ムードメーカーとも言いますね。ところが、これが意外と難しい。特に難儀なのは元気のない男たちをハイにしてやることです。う〜ん・・・でも何をやっても空振りしちゃうことがあるんですよコレが。

 これは、日によって大きな差があるのですが、男性たちがイニシアチブをとって盛り上がるツアーは大抵の場合、大成功します。一方、男性たちがシーンとしていると、女性たちは気味悪がってしまうんですよね。つまり、引いてしまうんです。だから僕は男性たちの相手に一生懸命になることになるのです。でもなあ・・・。しかしなあ・・・。

 一方で女性たちはというと、女性って元気なんですよね。あまり手がかからないんです。勝手に遊んでいるし、男性なんかに頼らずに先ほどまで見知らぬ者同士だったはずの女性たちの間でさっさと友達になってワァワァキャアキャア、あっという間に盛り上がってる。大変な騒ぎです。

 こういうとき有難いのが、やたら元気な男性の存在です。大きな声で笑い、ダイナミックに転び、また笑う。山にこだまする笑い声。こんな朗らかな男性(ずいぶん減ってしまったような気がしますが)がいるとツアーはとても盛り上がりますよね。その方を中心に笑いの輪が広がる。みんな幸せになるんです。

 さあ、男性たち!笑いましょう!まず笑おう。そして大げさに転ぼう!これで日ごろのストレスも発散できるってモンですよ。男性の元気がないという傾向はあくまで傾向であって決して全員に当てはまるわけではないけども、最近、男性たちの元気が急速に落ちている傾向があって、そのことが僕はなんとなく心細くて仕方がありません。みんな、もっと遊ばないとダメだよ〜。

 

2004年1月28日(水) くもり時々晴れ

 

 噴煙がちょっと怖いぞ、前十勝

 今週は閑散としてガイドの山小屋にもお客が少なくきょうも休みになった。そこで昨日に引き続き札幌から遊びに来ている友人と連れだって白銀荘を目指した。プライベートな遊びツアー2連チャンだ。さあ、遊ぶぞ!

 嬉しいことに今朝もまた天気予報が外れてくれた。山に近づくにつれて空がどんどん晴れてくる。まもなく目の前に十勝岳の噴煙と前十勝のダイナミックな斜面が広がった。

 昨日と同じように夜の間に20センチほどの新雪が積もったようだった。この2日間とも寝静まった夜に降雪があり、朝になると晴れてくれる。どうも話がうますぎる、そんな奇跡的な日が2日も続いた。ある意味で不気味。付け足すならば昨日から十勝岳の噴煙が気味の悪い灰色をしている。短い周期で物凄い勢いでブハーッと盛り上がってくる。その様は巨大動物の鼻息のようでもある。山はあきらかに興奮しているように思える。

 いつになく機嫌の悪い十勝岳。もしかしたらしばらく滑れなくなるかも、という漠然とした思いもあり、きょうは前十勝を目指した。上のほうは地雷が多いという友人ガイド「ぱっちまん」のアドバイスを参考に行き先の斜面はカバワラに狙いを定めた。これが当たった。

 カバワラにはレスキューインストラクター阿部さん率いるレスキュー訓練のグループが先行していて途中からラッセルを使わせてもらった。どうもありがとう。

 正午現在、天気は晴れ。雪質はスベスベのサラサラ。パウダーの深さ約40センチ。きょうも最高の雪質だった。派手に巻きあがる胸パウを楽しみながらボトムまで一気に滑り降りた。レスキュー訓練生たちの目前だったこともあってバランス重視の無難な滑りをしてしまったことがやや後悔されるが、まあいいだろう。革靴細板の友人もワアワアと喚きながら降りてきた。この粉は友人にもいいストレス発散の薬になったと思う。僕はこの2日間で風邪気味と過労気味が一気に完治してしまった。ありがとう十勝連峰。やっぱり君は最高にいい粉薬だよ。

 続いて賑やかなレスキュー訓練生たちが斜面に飛び込んでくる。こちらも大騒ぎしている。みんないい笑顔だった。みんなとは少ししか話せなかったけど、きっとまた会えると思います。ともかく「楽しむこと」これがガイドへの第1歩だからね。もちろんみんな合格だね。
 さて、下山後は白銀荘の露天風呂に向かう。・・・いるいるいる。きょうもパウダージャンキーたちの日焼けした顔が湯の上に並んでいる。その中央にはビーテックの川上さんと、そのお客さん。川上さんはries cafeの秘伝のチキンカレーについて詳しく教えてくれた。タマネギ1キロ、それからトマト・・・早速やってもよう。それから、なんと昨年僕のT2(テレマークスキーブーツの名称)を買ってくれたOさんがいるではないか。Oさんは三段山2002ビデオにも愛犬と一緒に登場しているノッポさんのような人だ。飄々とした面白い人 で、この人と山に行けばきっと楽しいに違いないと思った。きょうもいろんな話で露天風呂トークは盛り上がる。いろんな人に会う。いろんな人と友達になれる。これだからバックカントリースキーはやめられない。まもなく雪が舞い始め、山が微笑んでいた。

 

2004年1月27日(火) くもりのち晴れ

 

 三段山は素晴らしい 

きょうはノーマルコースから比較的離れた斜面を目指すことにする。

1本目は火口西斜面。ダケカンバの疎林が広がる斜面はいつも雪質がよく斜度もちょうどいい。足慣らしにまず滑ってみる。げ、激パウ。オーバーヘッドに息が詰まった。

2本目は火口東尾根。****谷から小ピークにエントリーするのが一般的だがきょうは火口からシールをつけて小ピークに向けて登り返す。森林限界付近の約400mのオープンバーン。晴れた空に樹氷が反射してまぶしい。一気にボトムを目指す。い、いい!ひゃっほう!たちまち視界が真っ白になりオーバーヘッドパウダーに目がくらむ。雪は綿毛のように軽く、板の先端がいい感じに浮かびあがり、面白いように次のターンへと食い込んでくれる。しかしながらパウダーが深くてストックを突くタイミングを逃してしまい、両手を広げた姿勢のままでスーッと樹林帯まで滑り込んだ。笑いがとまらない!脳味噌が溶けていく・・・。

ほろ酔い気分のようにそのままいい気分で昼飯を食っていると、沢を挟んだやや離れた稜線上にノーマルコースから外れてこちら側へ向かおうとするテレマーカーたちの姿があった。青空と十勝岳の派手な噴煙を背景にして、いい位置に立ってこちらを指している。お、なんだかカッコイイ。斜面へのエントリーの角度もなかなかいい。そこは僕がよく使う斜面でもある。エントリーの位置に立つと、眼下に広がるエゾマツの原生林が圧巻で、まるでパタゴニアのカタログ写真のようなんだ。眺め良し、斜度、角度とも申し分ない。うまくいけば標高差300、距離500mの長いシュートを滑ることができる。ちょっと、羨ましかった。

きょう狙っていた三段山のパウダーゾーンを滑り終わり、さらに翁コースを1本滑り、白銀荘の露天風呂に向かうと、・・・いるいるいる。きょうもパウダージャンキーたちの日焼けした顔が湯の上に並んでいる。その中央にはぱっちまんと、そのお客さん。それから、長野から来たというテレマーカーたち。みんなきょうの感動を嬉しそうに話して盛り上がっている。僕らはパウダーを通してすぐに打ち解けることができる。三段山はやっぱり素晴らしい。

長野から来たテレマーカーたちは、よくよく話していると僕が羨ましがっていた斜面にエントリーした3人であったことがわかった。気持ちのいい人たちだった。なんと中央アルプスを擁する長野のテレマーカーたちが三段山を絶賛している。そのことが、僕はなぜだか自分のことのように嬉しかった。

 

2004年1月26日(月)

 

 五稜 −ごりょう− 美瑛町

夏には観光客でごったがえす美瑛町「パッチワークの路」のずっと奥、丘陵地帯を見下ろすことができる高台に「五稜」と呼ばれる地区があります。ここまで来ると観光客の数はぐっと減り、妙なオカマチックに媚びた観光施設もなく、しかし風景は純粋に美しく、まさしく穴場といった印象。そこは360度の展望が広がる屈指のビューポイントです。また、この五稜の丘にはテレマークスキーインストラクター川上敦さんのオフィス「ビーテック」そして、その奥様のお店「ries cafe'」があります。五稜の丘はちょうどお店の裏山といったところですね。

この五稜の丘、1年のうちでも特に冬の眺めは比類のない素晴らしさです。僕はスキーを履いて丘の稜線にあたる360度展望の除雪されていない農道を歩き、パノラマ風景を楽しみます。え?風景だけ?そう、僕が風景だけで終わらせるはずなんか、ないんですよね、まさかね。うん。

広い丘陵地は夏の間は畑(note:耕作期間中は決して立ち入ってはいけません!!) なのですが、豊富な積雪によって農地へのインパクトが低くなる冬は、この傾斜地が僕に「さあ、ここを滑って!」と呼びかけているものだから不思議です。(いやいや…呼ばない呼ばない)そこはまるでプライベートゲレンデといった趣き。ちょうどいい傾斜はテレマークスキーの練習にはもってこいです。登っては滑り、登っては滑り、せっせとオフピステの練習に励みます。最近、クロスカントリースキーに回帰した僕は、あの細いクロカンでのテレマークターンにハマっています。これがなんとも楽しい。いや〜楽しいです〜。風景はいいし、楽しいし、僕は五稜が大好きです。やっぱり冬はいいです。幸せ。大好き。

 

ビーテックries cafe

僕の長年の我流をかなり矯正してくれたビーテックの川上さん。受講した感想を一言で言うならば、まさに「目からウロコ」でした。最近になって僕のお客さんにも講習を受ける人が増えてきました。講習から帰ってきたら皆、びっくりするくらい上手になっています。ある程度人数がまとまれば、美瑛町内なら宿まで迎えにきてくれることもあります。

・ビーテックテレマークスキー講習 1日5千円(リフト代別途)tel 0166-68-7821

それから、ries cafe'のケーキ、それからチキンカレー、ソーセージカレー、すごく美味かった。正直いうとあまり教えたくないようなヒミツにしておきたい店。隠れ家に最適な素敵なお店です。電話番号同上、冬は土日月曜日のみ営業。ランチ時間は人気があるので早めに来店したほうが良いかも。

 

2004年1月25日(日)

 

 山小屋ドーム ぼくの雪洞へようこそ

三段山の2段目に相当する森林限界付近にそれはあります。2段目というと、悪天候の時には急激に視界を失い、そこから先の進退を迷う境界線でもあります。

そんなとき、僕はいったん雪洞に入ることにしています。吹雪の日でもそこは静かで暖か。窓や入り口から見える風景が横殴りの吹雪でも、ここにいれば安全です。7〜8人は入れるその雪洞には5人くらいならば横になって寝ることができる広さがあり、天井の高さも十分です。 小さな入り口と窓以外は頑丈な雪壁に囲まれているので隙間風も少なく、きっと気持ちよく眠れるはずです。テントのように風で飛ばされたり積雪で潰されることもありません。半地下構造なので雪崩に巻き込まれることもありません。雪山における快適で安全な住居として使用することができます。

この雪洞は自然が作り出したドーム状構造物です。周辺の地形とエゾマツの木立ちがうまく作用し合いドーム状の構造物を形成しています。外から見ても雪洞の存在に気付く人は少ないでしょう。中はというと、まるで人が作ったように円形の平らな空間が広がっています。エゾマツの幹と根の広がりが天井の支えになり、決して崩れないドーム天井を構成しています。そしてこのドームは厚い雪にしっかり囲まれていて中は思いのほか暖かなのです。どんな悪天候にもビクともしませんし、 スコップで作るイグルーや普通の雪洞のように日数が経過するごとに萎縮や崩壊が進むことも決してありません。周辺の野山に豊富な積雪がある限り、使用することができるでしょう。

僕がこのドーム状構造物を発見したのは5年前。森を歩いていて偶然見つけました。しかし、ここの入り口を見つけるのは、例えば森のなかで1本の木を探し出すようなものなので、しばらくの間は 再び見つけ出すことが大変難しかったのです。やがて住所到達のコツをつかみ、おととしから積極的に利用するようになりました。ときどきラーメン鍋や焼肉をしてみたり。天気が悪い日にここに立ち寄ると、中はまるで宴会場のようです。

ここはとても便利です。緊急の避難小屋として使えるばかりか、悪天候時の2段目付近での天候回復待ち、昼休憩にも便利です。とても快適なので、そのうち宿泊してみようと思ってます。周辺はビバークのための焚き木にも困らないし、 温泉まではたったの15分。もちろん携帯電話だって使用できます。

きょう、ツアーの途中で久しぶりに我が家に立ち寄ってみました。今年の冬もドームは頑丈に完成していました。きょうのお客さんたちは偶然が作り出した自然の構造物に興味津々です。そして、雪中キャンプや冒険サバイバルの類が大好きなアシスタントのニッシー、毎日の生活がサバイバルだという酷寒家屋生活の バックカントリースキーガイドのU田さん、2人ともこのドームに感心しています。U田さんはここで生活したいと言い出すし、ニッシーは興奮気味に、次はここで泊まるんだと張り切っているし。おいおい2人とも・・・。

僕の三段山テレマークスキーツアーに参加して、もしも吹雪に遭ったら。あなたもきっと、このドームに立ち寄ることができますよ。僕の雪洞にようこそ!

でも、そのとき中から人が出てきたらどうしよう・・・。表札とか出してたら、なんだかイヤだなあ。

 

2004年1月22日(木)

 

 クロスカントリースキー(歩くスキー)

最近はテレマークスキーや、太くてエッジのある山用クロスカントリースキーを履く機会が多いせいか、たまにあの細くて長いクロスカントリースキーを履くとその不安定さと軽快さが面白くてなりません。

雪を踏みしめる感触が足裏から伝わってきます。プラブーツではこうはいきませんね。うまく板と足裏感覚をつかむことができると、条件のよい斜面ではテレマークターンをすることだってできます。面白い!けっこう夢中になってしまいます、クロカン。調子に乗ると転ぶけど。

最近の僕は、しばらく遠ざかっていた細いテレマークスキーと登山靴のような皮のブーツが気になって仕方がありません。 御存知のとおりこの組み合わせは限りなくクロカンに近いですよね。最新の道具のおかげでテレマークスキーは確かに上手になったし技量の広がりに比例してぐんと面白くなりました。でも、クロスカントリースキーに夢中になっていると、自分は何か大切なものを性能の高い道具と引換えにして忘れてきたような気がしてしまうのです。

クロカンは、かつてスキーに夢中になったときのことを思い出させてくれます。お客さんを連れて美瑛の丘を歩くとき、僕はけっこう楽しんでいます。広い丘陵地、キュッキュッと踏みしめる雪、下り坂、スーッと伸びていくライン、後ろ足にのせた加重が開放され、次のターンの方向に伸びていく、う、板が細すぎて次の後ろ足へのエッジの切り替えが難しい・・・おっとここでバランスが崩れて雪に顔から突っ込む。

「グフッ!」

笑える。また挑戦だ!いやあクロカンって、ほんとうに面白いですねっ!!

クロカンの面白さを再認識すると、やっぱり次は、皮ブーツと細板テレマークです。さて、この道具で果たして自分は今と同じ滑りができるのか?滑りの基本は同じはずだから。 自分は道具に頼って退化してはいないか?でもやっぱり退化してんだろうなぁ・・・。さあ、まずは明日もクロカンで練習するぞー!っと。

え、これが僕の仕事です。ときどき「遊びモード」に切り替わりますけどね。

 

2004年1月21日(水)

 

 父子家庭

北海道にやってきて2年になる妻と娘。いまでは娘は立派な道産子に成長し北海道弁と関西弁の混じったあやしい言語を話します。いっぽうで妻は、2年分の疲れが貯まってしまったのでしょうか。11月末から入院してしまい、この冬の僕は父子家庭の父親です。ぼくは自活生活が長かったこともあって料理洗濯掃除など(料理はそこそこ上手です。特に和食は美味いです!)家事が得意なので当初はさほど苦痛でもなく、かえって楽しいくらいだったのですが、正月が終わり一時帰宅していた妻が病院に戻り、ようやく新学期も始まった、やれやれ、と思ったら、いきなり娘が体調を崩してしまったのです。いつもはウルサイくらい元気なのに、その日は学校から帰るなり真っ青になっておう吐を繰り返す娘。そのとき僕はどうしたらいいのか頭を抱えてオロオロするばかりでした。どうしよ〜?

明日も山に行くツアーが入っている、本州からやってきたお客さんはすでに宿に到着して明日を楽しみにしている。断るわけにはいかない。でも、病気の娘をひとりぼっちで家に残してはいけない。人を頼むと売上収入よりも高くつく。さあ、どうする??それどころか夕方から診てくれる病院がない!それどころか美瑛町には小児科すらないじゃないか!どうする?どうする?

東奔西走した結果、結局は何とかなったわけですが、いやあ父子家庭ってやっぱり大変です。朝早く起きて弁当や朝食を作り「起きろ〜!」と布団を剥ぎとり朝食を食べさせて洗面の面倒をみてやり学校に着て行く服を選び身だしなみも手伝ってやりようやく学校に送り出してやる・・・。夕方には栄養のバランスを考えた晩飯を作り宿題をみてやり一緒に風呂に入る。洗い髪にドライヤーをかけながら鏡を覗きこんでは「可愛い可愛い」と褒めてやり、やがて寝息をたてはじめた娘の四肢にアトピー皮膚炎の薬を塗ってやる。寝顔を確認して布団をかけてやり、そっと部屋を出る。そして翌日のガイドプログラムの準備をはじめる・・・。

これまで娘とは長い別居生活があり充分な愛情を注いでやることができませんでした。また、この2年間も朝から晩まで仕事仕事の毎日でスキンシップが不足していたこともあって、僕は父子家庭の生活にささやかな幸せすら感じていたのですが、それもこれも健康であってこそ。それが崩れた瞬間に情けないことに僕は、あっけなくパニックになってしまったのです。ああ情けない情けない・・・

幸い娘はあっという間に快方に向かい今ではケロリとしているのですが、そのときパパはほんとうに困ったんです。冬山で遭難の危機に立ち向かうときのほうが僕はきっと冷静でいられる。でも、娘のこととなると右往左往してしまって、いやいやこればっかりは、なかなか・・・。

 

2004年1月20日(火) 晴れ時々くもり

 

 きょうの美瑛岳山麓

先週の木曜日には激しいラッセルを要求された美瑛岳山麓ですが、たった5日間でずいぶん雪が締まっていて驚きました。先週は深さ70センチだったラッセルの雪壁はなんと30センチに減少、雪が締まっていくスピードがこんなに速いとは、きょう初めて知りました。

もうひとつ驚いたのは、ふだん人の立ち入ることの少ないこの森に、週末に団体が乗り込んだ様子で、いつもならばひっそり1本のトレースが川沿いに伸びているはずの静かな森には秩序のない荒っぽいスキーやスノーシューのトレースに加えてスノーモービルで走り回った痕も生々しく、もう散々に踏み荒らされていました。こういう光景を見ていると、とても寂しくなってしまいます。

思えばこの森は僕と僕の前任の先輩ガイドがいろんな森を歩きまわった末に見つけた、いわば足で見つけたネイチャースキーのフィールドでした。僕らのほかにこの森に立ち入る人といえば厳冬の美瑛岳に登ろうとする正統派の山屋さんくらいのもので、特に目立ったウリがあるわけではないこの森には自然のままにクマゲラが生息し、安息の場を求めて小鹿を連れたエゾシカが集う、花咲く春の野山の夢をみながら熊が眠る、ほんとうに豊かで静かな森だったのです。

ここが荒らされていく責任を僕は感じています。僕がツアーで立ち入るから、それに興味をもった誰かが僕のスキーの跡を追いかける。そこらへんに無秩序に蛍光ビニールの目印をぶらさげたりする。そのうち営業を目的とする観光ホテルなどの業者がこれに気付く。「自然の案内」と称する彼らはおかしなことに自分たちでフィールドを見つける努力をしない。旅行会社などから「早く何か話題になることをやれ」だの、あれこれせっつかれた末に手っ取り早く商売をはじめて利益を得るには誰かの2番煎じを頂戴するのが一番、ということになる。だから自称「自然の案内」人は決して心からこのフィールドを愛することはない。こうしてまたフィールドが台無しになっていく。動物たちは去っていく。

僕が観光ホテルや大手旅行会社と提携しようとしないわけ。それは、大好きな自然フィールドを彼らの商売エゴの犠牲にしたくはないからです。彼らに振り回されているアウトドア会社を何社も知っていますが、ほんとうに気の毒です。ほんとうは正しくない。でも、やらなければならない。それもこれもみんな生き残るため。従業員とその家族の生活のため。それは、痛いほど理解できます。こうして結局、僕がやらなくてもほかの誰かがやっちゃうんですよね・・・。

僕はまた新しいフィールドを探しにいこうと思います。ここよりもっと素敵な森を探しにいきます。そしてそこはもうWebに公表しないつもりです。もう決して誰にも教えません。ごめんなさい・・・。

 

2004年1月19日(月)

 

板の悲鳴

数日前レンタルのスキー板が1セット、ボロボロになって返却されました。今シーズン買ったばかりの板でした。けっこう高いものです。

僕のツアーのなかに「十勝岳山麓バックカントリーツアー」というプログラムがあります。このツアーのウリは何といっても、あまりスキーは得意ではない、あまり登山経験 もない、冬山なんて無縁、でも好奇心は旺盛、本物を見たい知りたい体験したい、そんな普通の人が登山のエキスパートやベテランテレマーカー並みの体験をすることができる 、観光用に用意されたものではない本物の冬山の大自然と出会うことができることです。僕はこのツアーに絶対の自信をもっています。厳冬の十勝連峰において初心者を安全に楽しく遊ばせるというのは 普通考えられないことで容易ではありません。それどころか常に危険回避のために神経を尖らせていなければなりません。楽に面白おかしくガイド業をしたいなら、それなりにスキースノボが上手な 人や経験者を対象にすればいいのです。そのほうが簡単だしリスクも投資も少なくて済むから。ガイド経験がある方ならば僕の仕事がけっこう面倒でしんどいことが容易に理解できますよね?そして 、何たって「割りに合わない」。でしょ?

でも、僕はできるだけ沢山の方に十勝連峰を見てもらいたいのです。そう、何たってここは世界でいちばん素敵な場所ですから。冬の十勝連峰は最高です。何年たっても毎日通っても僕は決して飽きるということがありません。この仕事、ほんとうに大好きです。

このツアーの参加費5000円。テレマークスキーレンタル込み。このツアー、誰も真似できないと僕は自信をもっています。安いです。これで「高い」とおっしゃるお客さんはきっぱり断ることだってできます。強気になれるくらい自信があります。安いのがいいのなら、そのへんでクロカンでもやれば?って言いたくなります。

レンタル品のスキーセットは計8万円以上します。それなりに、いいものです。レンタル料だけでも5千円というのが正常な料金といったところでしょうか。ということは、板のレンタル料込みで5千円というこのツアーの利益見通しはどうなってるか?ズバリ、向こう3年間は利益が出ません。僕だって経営のプロです。それくらいのことはわかります。つまり。あれです。アホですね。商売人としては僕は見通しが甘い軽薄な馬鹿社長です。これだから何年たっても貧乏なのでしょう。こう書けばまるで善人のようですが、商売の世界では決して褒められた行為ではありません。このまま失敗したら、ただのうだつの上がらない中年オヤジですから。

ではなぜ?僕はある程度、お客さんを信頼しています。道具も大事に使ってくれると信じています。口を酸っぱくして「大事にして!」とも言っています。そして、ほとんどの人は大切にしてくれます。そんな些細なことがとても嬉しいです。だから僕はお客さんが好き。ある意味、仲間として見ているし信頼しています。でも、やっぱりたまにいるんです。乱暴なひと。

残念なことですが、道具をボロボロにして「これで元とったよナ」と口にするのが聞こえたこともあります。また、板を壊しておいて、「これは新品ではないから修理代は半額しか払えない」と平気で言い放つ人もいました。とても悲しいことです。みんながレンタル品を自分の持ち物と同じように大切に扱ってくれるなら、もしかしたら値段をさらに下げることができるかもしれません。しかしながら、現実はやっぱりそんなに甘いものではありませんでした。

数日前の話に戻ります。ツアー中、ある人に貸した板が「ガリッ!ガリッ!」と鈍い音をたてるのを何度も聴きました。大切に使えば5年使える板、いや5年使わなければならない板の寿命が見る見る削り取られていきます。それは僕の悲鳴であり板の悲鳴、それとなく何度もお願いしましたが、その人は決して板を大切に扱おうとはしてくれませんでした。とても残念なことです。

結局、その人が使った板は無残な姿になって返ってきました。こうなってしまえば、もう貸し出すことはできません。その人は新品同様だった3万円の板を消耗して使いきり、見事に「元」をとりました。そして、僕は抗議することすらできません。補償を求めたところで壊したわけではない限り弁償してもらえるはずないです。泣き寝入りです。悔しいけれど仕方がありません。日本の法律は消費者の保護はするけれど業者には厳しいですからね。僕にできることは今後そのお客さんの参加を禁止することくらいです。

今回のことで静かに心に決めたことがあります。

「やっぱり来年は値上げしよう。ほんと、俺は馬鹿だったなぁ。こんなお客さんを信じたりしてさ。」

このツアー、もっと楽しくしたい、でもなんとか安く抑えたい。そんな思いで借金をして赤字覚悟で揃えた新しい板は確かに値段は高かったけど、これまでのことが嘘のようにツアーがぐんと楽しくなりました。でも、僕が目指した理想はごく少数の心ないひとの行為で、いとも簡単に崩壊してしまったような気がします。そしてまた明日から悩める日々が続きます。

でもなぁ、着実に儲ける方針にしてしまったら普通のアウトドア会社と同じになっちゃうものなぁ……、うちは普通じゃないからいいんだけどなあ…、困ったなぁ…。

みなさん、僕はどうしたらいいでしょうか??

 

2004年1月18日(日)

 

ダメだおじさん登場

なんでも否定するおじさん、それが「ダメだおじさん」。

三段山の登山口にある山小屋「吹上温泉白銀荘」のフロントで受付の方と言葉を交わす日帰り入浴客のおじさん(注:登山者ではない)の会話。

「今年は雪が少ないねえ!笹が埋もれてないしょ。今年は山スキーはダメだな、ダメだダメだ」(みんな俺の説法を聞いてくれ風に大きな声で)

一方、フロントの方はあいまいな返事。

ダメだおじさん、振り返り、窓の外の風景を遠くを見るような目で眺め、確信に満ちた独り言(にしては大きな声で)。

「ダメだな〜、今年わっ!」

そしてついに来ました。一見してたった今、スキーで山から下りてきたとわかる僕に話しかけようと近づいてきます。きたきたきた。では、ありのままを答えようではないか。僕は身構えます。

ダメだおじさん、ついにきた!

「山はどうだい?ダメでしょ?」

僕は正直に答えます。

「いや、けっこう積もりましたよ。スキーには全然問題ないです。 2mくらいですかね、雪質もなかなかいいですよ」

ところが、おじさん 。実は話をまったく聴いていないのでしょうか…。

「いや、ダメだな今年は。笹が埋もれてない。ダメだダメだ。」

そういいながら全てを全否定して怒ったように去っていきました。肯定的な返事をしてしまった僕は、明らかに嫌われたようでした。

ダメだおじさん。ネガティブなおじさん。全否定のひと。人の話を聞かない、いや、期待に反した答えには一切耳を貸さず、実は訊ねる前から結論を決めているおじさん。だったら聞くなよな〜

おじさん、あのね、ダメだと思うなら来なきゃいいんだよ。

 

窓の外の風景、ダメだおじさんの目の前にあったのは1mを越える雪の壁。どっから見ても大雪。おじさん、12月頃の一時期の報道の内容を、そのまんまインプットしちゃってそのままフリーズしちゃってるのかな?

「ダメだな」

 

2004年1月11日(日)

 

一晩で奇跡は起こる、それが三段山。

すばらしい。昨日までの悪雪の上に、なんと新雪パウダーが一晩で40センチ! ・・・なんて素晴らしいんでしょう。(ビフォアフターふうに)

しかし1日でドカッと積もりすぎたおかげで延々と太腿に達する積雪を突き進む 、消耗の激しいラッセル行軍が続きました。

ラッセルは、吹き溜まりでは腰上にまで達します。

さすがにこんな日は一般登山者は自分でルートを作ろうとはし ません。あくまで他人の作った「道」から外れようとしません。ですから、ある意味ではこんな日はチャンスです。

きょう三段山は数十人〜百人程度のごった返すほどの人入り、しかしながらノーマルコース以外ほとんど手付かずというのが奇跡的で あり皮肉でもあります。きょうガイドの山小屋ツアー上級クラス一行はまったく手付かずのパウダーゾーン、○○○谷の稜線オープン斜面を満喫しました。 参加者のみんなは大自然の真っ只中、広い雪原に思い思いの開放的なシュプールを描きだしました。

その一方で登山者の列が続いた一般登山ルートは・・・、悲惨なほどズタズタ の斜面になってしまったようです。深い雪がズタズタにされた斜面ほど醜いものはありません。なぜ登りに使ったルートを下山時にも滑ってしまうのか? 地図が読めて自分の行動に責任をもてる人ならば滑れる斜面を見つけることに苦労はしないはずなのですが。せっかく苦労して登ったのに下りでもわざわざ苦労するなんて理解に苦しみますが、まあいいでしょう。おかげで私たちはご馳走にありつけます。

明暗を分けたもの。それは「自分でルートを開拓するか、しないか」ということ。

やっぱり、おいしい思いをするためには労力は惜しんではいけないということです。しかしながら苦労してルートづくりをしても、ふと振り返ると、数十m 後方には私たち一行を尾行する見知らぬ「追跡サン」の姿。このような人たちは大抵の場合、間隔を詰めずに黙々と追尾してきます。こちらが休憩すると、その人たちも後ろを向いて 、決して視線を合わさないように休憩しますよね(苦笑)。このような登山者との心理的駆け引きも場合によっては必要なのかもしれません。

 

2004年1月9日(金)

昨年の10月に収穫して仕込んだ山葡萄のワインを飲んでみました。混じりっけ無しの天然山葡萄。そこらへんの野山に自生していた野生の果実です。きっと昔の人もこの葡萄の搾り汁を利用したに違いありません。

野生の山葡萄の表皮には天然の酵母菌が付着しています。だから、この酵母を洗い流してしまわない限り、搾り汁をそのまま放置しておくと酵母(イースト菌の親戚)が葡萄の糖分を食べて発酵をはじめます。やがてワインができてしまうのです。何と、自然界ってうまく出来ているんでしょう!ワインほど簡単に作れるお酒はありませんね!素敵です。

さあ、そのお味は?お!ちゃんとワインだ!でもちょっと酸っぱいです。山葡萄の酸味が残っています。それでも、やっぱり幾分まろやかになっています。生葡萄の時はしかめっ面するくらい酸っぱかったから。うん、でも旨い。これはなかなか旨い。旨いぞ!

そして、肝心の「お酒」の出来栄え。んん?これは本当に酒なのか?ちっとも酔わない。アルコール度数はかなり低いようです。ちょっと物足りないかな?発酵時の温度管理が上手ではなかったということでしょう。

昔のひとが飲んだであろうワインと同じものを作って、そして飲んでみる。おいしいし、タダだし、なんだか面白い体験でした。よーし、こんどは「酔うワイン」を作るぞ〜。今年の秋が楽しみだ〜。(って、なんて低い目標なんだろう・・・。)

 

2004年1月8日(木)雪

自己責任の原点「転んだら自分で起きる。」

簡単なようでけっこう難しいんですねコレが。でも、これぞ「自己責任」の原点です。僕はツアー中、それが女性であろうと男性であろうと危険な状況でないかぎり、まず手を貸すことは ありません。ちょっと冷たいと思われるかもしれないんだけど、やっぱりここは譲れないものがあります。

転んだら起きる。簡単なようで、ところが起き上がりの苦手なひとには大変な苦労です。深い雪のなかにズブズブ埋もれゆくお尻。突いた手も埋まる。たすけて〜。そこへヒーローの登場「大丈夫?さあこの手を握って。起こしてあげるから。」こんな場面では誰もがそんなこと期待しますよね。無理もありません。起きる、こんな当たり前のことが深い雪の中ではなかなかの苦労なのですから。実は、たまに見かねてつい手を貸してしまうことがあります。 しかし困ったことにそうすることによってその人は次から自分で起き上がる努力をしなくなる傾向があるのです。雪のうえに寝転がって「私はここにいますよー起き上がれないので助けてくださーい」という意味のこもった精一杯の アピールをして誰かに頼ろうとします。もしここで再び手を貸したなら、あなたはきょう1日この人の面倒を見てあげるだけで終わってしまうかもしれません。次も、その次もあなたを呼ぶ声が雪山に響き渡るでしょう。さあ、あなたならどうする?

意地悪な僕は気付かないフリをします。別の人の滑降に注目したりして、イエーイ!なんて叫んだり野次ったりして盛り上がっています。その間、駆け引きの微妙な空気があたりに漂います。 ツアーの秩序を保つためには専属お助けマンになるわけにはいきません。「頼む、自分で起きあがる努力をしてくれ!」心のなかで手を合わせています。ここは我慢のとき。気付かない気付かない…聞こえない聞こえない…。

転んだ女の子を助けてあげる役目。これは男性たちに任せるのがいちばんですね。とても、おいしい役目です。僕が客ならばお気に入りの女の子のもとに飛んで行くなあ。「大丈夫?さあ僕の手を握って!!」 う〜ん、なんだかすぐに芽生えそう。やっぱりお客さんはいいなあ・・・。

起きるのを手伝ってもらえなかったお客さんはその後どうなるか?そうですね、心の叫びが届くんでしょうか。大抵はちゃんと起き上がりのコツを覚えたり、転ばないようにすごいスピードで上達したりします。自信を喪失してしまう人もいますが、ほとんどの場合なんとかなってしまうんですよね。でも、たま〜に、ささやかな仕返しをされることもあります。構ってもらえなかった腹いせっていうんでしょうか。

ガイド業、なかなか大変です。やっぱりお客さんはいいなあ・・・。

 

2004年1月4日(日)雪

年末から大忙しの日々が続きましたが、正月休みも終わりきょうからひと段落。久しぶりに少人数のお客さんを連れて滑り中心のバックカントリーを楽しみました。きょうのお客さんは6人。みんなそこそこ上手だったうえ、なんと今朝は今シーズン最高の積雪量。つい昨日の足跡も完全に雪のなかに消えていてラッセル(新雪をかき分けてルートをつくる作業のこと)が大変だったものの、素晴らしい滑降、素晴らしい雪。気持ちよく仕事を楽しませていただきました。雪がいいと、みんなホントに幸せそう。みんながいい滑りをしていると、僕もラッセルの苦労がすっかり報われます。振り返るとオープン斜面を派手なパウダーを巻き上げながら滑降してくる6人の仲間たちの姿。みんなかっこいい!

 


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